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ノーレイティングとは?導入企業の事例や失敗しないための注意点も解説

従業員をランク付けしない人事評価制度「ノーレイティング」を導入する企業が、国内外で増えています。大手企業の導入実績も報告される中、自社への適用を検討する人事担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、ノーレイティングの基本的な意味から従来制度との違い、メリット・デメリット、向いている企業の特徴、成功させるためのポイントについて解説しています。実際にノーレイティングを導入した企業の事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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ノーレイティングとは?

近年、従来の人事評価制度に限界を感じる企業が増える中、新たな選択肢としてノーレイティングが注目を集めています。まずはその基本的な意味と、従来制度との違いを整理しておきましょう。

  • ノーレイティングの意味
  • ノーレイティングと従来の評価制度の違い
  • ノーレイティングが注目される背景

ノーレイティングの意味

ノーレイティング(No Rating)とは、従業員の業績や能力を数値や段階(S・A・B・Cなど)で評価する「レイティング(格付け)」を廃止した人事評価制度です。代わりに、上司と部下が定期的な対話やフィードバックを通じて成長を促すことを重視します。

米国の大手企業を中心に広まり、近年は日本企業にも導入の動きが広がっています。

ノーレイティングと従来の評価制度の違い

ノーレイティングはOKR・MBOといった従来の評価制度とは目的や運用方法が異なります。ノーレイティングは数値による格付け自体をなくし、継続的な対話による成長支援を本質とする点が大きな違いです。

比較項目ノーレイティングOKRMBO
主な目的成長支援・対話促進目標整合・挑戦目標達成度の評価
評価方法数値評価なし達成率で数値化目標の達成度を格付け
評価頻度随時・継続的四半期ごと年1〜2回
給与との連動別途裁量で判断基本連動しない連動することが多い

ノーレイティングが注目される背景

従来の数値評価制度は、「評価のための評価」になりがちで、従業員のモチベーション低下や優秀人材の離職につながるという問題が指摘されてきました。また、変化の速いビジネス環境では年1回の評価では対応が遅すぎるという声も高まっています。

こうした課題を受け、継続的な成長支援を重視するノーレイティングへの関心が急速に高まっています。

ノーレイティングを導入するメリット・デメリット

ノーレイティングは従業員エンゲージメントの向上や管理コスト削減など多くの利点がある一方、運用面での課題も存在します。ノーレイティングの導入前に、両面をしっかり把握しておきましょう。

ノーレイティングがもたらすメリット

①従業員エンゲージメントが向上する

数値で格付けされることへのプレッシャーがなくなることで、従業員は評価を恐れず挑戦しやすくなります。

また、日常的なフィードバックを通じて「自分の成長が正当に見てもらえている」という実感が生まれ、仕事への主体性や組織への帰属意識が高まります。結果として、離職率の低下や生産性向上につながる効果が期待できるでしょう。

②継続的なフィードバック文化が醸成される

年1〜2回の評価面談に限らず、日常的に上司と部下が対話する機会が増えます。問題が起きてから対処するのではなく、小さな課題をその都度解消できるため、個人の成長スピードが上がります。

また、フィードバックが習慣化されることで、組織全体に心理的安全性が高まり、オープンなコミュニケーション文化が根付きやすくなるのです。

③管理コストを削減できる

従来の評価制度では、評価基準の設計・評価シートの記入・評価調整会議など、多くの工数が発生していました。ノーレイティングではこうした定期的な評価業務が不要になるため、人事部門・管理職双方の管理コストを大幅に削減できます。

削減したリソースを採用・育成・組織開発など、より付加価値の高い業務に集中させることが可能になります。

ノーレイティングがもたらすデメリット

①公平性の担保が難しい

数値評価をなくすことで、評価の基準が個々の管理職の主観に委ねられやすくなります。同じ成果を出しても、上司によって評価の重み付けが異なるケースが生じるため、従業員が「不公平だ」と感じるリスクがあります。

評価の透明性を保つためには、判断基準の言語化や評価プロセスの仕組みづくりが不可欠です。

②管理職への負担が増加する

ノーレイティングでは、管理職が定期的な1on1の実施・個別フィードバック・給与判断など、より多くの役割を担うことになります。これまで評価シートや評価基準に頼っていた部分を自らの判断で補う必要があるため、マネジメントスキルが低いと制度が形骸化するリスクもあります。

導入前の管理職育成が重要な課題となるでしょう。

③待遇との連動が曖昧になりやすい

従来の制度では評価ランクが給与・賞与・昇進等に直結していましたが、ノーレイティングでは数値の根拠がないため、待遇決定のロジックが見えにくくなります。従業員が「なぜ自分の給与がこの金額なのか」を理解できないと、かえって不満や不信感につながる可能性があるため要注意です。

待遇決定のプロセスを別途明確に設計することが求められます。

ノーレイティングが向いている企業の特徴

ノーレイティングは、すべての企業に適しているわけではありません。制度の効果を最大限に引き出すために、自社がどのような特徴を持つ企業に該当するかを確認しておきましょう。

  • 自律的な働き方を重視する企業
  • 変化のスピードが速い業界の企業
  • 心理的安全性が高い組織文化を持つ企業

自律的な働き方を重視する企業

ノーレイティングは、従業員一人ひとりが主体的に目標を設定し、自律的に行動できる文化が根付いている企業に適しています。数値評価がなくなる分、自分自身で成長の方向性を考え、上司との対話を通じてPDCAを回せる人材が多い組織ほど制度が機能しやすくなります。

リモートワークや裁量労働制を導入している企業とも、相性が良い制度です。

変化のスピードが速い業界の企業

IT・スタートアップ・コンサルティングなど、市場環境や業務内容が短期間で変わりやすい業界では、年1〜2回の評価サイクルでは現場の実態に追いつかないケースが多くあります。ノーレイティングは随時フィードバックを行う仕組みのため、状況の変化に合わせてリアルタイムで軌道修正が可能です。

スピードと柔軟性が求められる環境ほど、その強みが発揮されます。

心理的安全性が高い組織文化を持つ企業

ノーレイティングは、日常的なフィードバックや率直な対話が成立してはじめて機能する制度です。そのため、失敗を責めず意見を言いやすい雰囲気など、心理的安全性が土台として整っている組織が前提条件になります。

逆に、上下関係が強く発言しづらい文化の企業では、フィードバックが形骸化しやすく、制度本来の効果を得られない可能性があります。

ノーレイティングを成功させるためのポイント

ノーレイティングを導入しても、運用が伴わなければ形骸化するリスクがあります。ノーレイティングを機能させるために、あらかじめ押さえておくべき4つのポイントを解説します。

  • 制度の目的と方針を明確に示す
  • 管理職のフィードバックスキルを高める
  • 継続的なフィードバックの仕組みを整える
  • 給与・昇進の決定プロセスを別途設計する

制度の目的と方針を明確に示す

ノーレイティングの導入に失敗する組織の多くは、「数値評価をやめる」という手段だけが先行し、目的が社内に浸透していないケースです。「なぜ導入するのか」「何を目指すのか」を経営層が言語化し、全社に発信することが出発点になります。

制度への理解と納得感がなければ、現場は混乱するだけです。トップのコミットメントが制度の成否を大きく左右します。

管理職のフィードバックスキルを高める

ノーレイティングでは、評価シートや数値基準に代わり、管理職の対話力が制度の質を決める最大の要素になります。具体的かつ建設的なフィードバックを日常的に行うには、相応のスキルと経験が必要です。

導入前後にフィードバック研修や1on1トレーニングを実施し、管理職が自信を持って運用できる状態を整えることが、制度の形骸化を防ぐ鍵になります。

継続的なフィードバックの仕組みを整える

「継続的なフィードバック」は、仕組みがなければ掛け声だけで終わりがちです。1on1の頻度・アジェンダ・記録方法などをルール化し、組織全体で統一された運用ができる状態を作ることが欠かせません。

また、フィードバックツールや人事システムを活用して記録を蓄積することで、給与・昇進判断の材料としても活用できます。

給与・昇進の決定プロセスを別途設計する

ノーレイティングは評価の格付けをなくす制度ですが、給与や昇進の決定を不要にするわけではありません。数値の根拠がなくなる分、どのような観点・プロセスで待遇を決めるかを別途明文化する必要があります。

日常のフィードバック記録や目標達成状況・行動特性などを判断材料として整理し、従業員が納得できる透明性の高い決定プロセスを設計することが求められます。

ノーレイティングを導入した企業の事例

実際にノーレイティングを取り入れた企業はどのように運用し、どのような成果を上げているのでしょうか。代表的な3社の企業事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

  • 企業事例1:サッポロビール株式会社
  • 企業事例2:アドビ株式会社
  • 企業事例3:カルビー株式会社

企業事例1:サッポロビール株式会社

サッポロビール株式会社は、20年以上運用してきた相対評価による考課ランク制度を廃止し、2020年1月にノーレイティングへ移行しました。サッポロホールディングス・ポッカサッポロフード&ビバレッジとのグループ3社で約2年半をかけて制度を設計。

スキルレビュー・パフォーマンスレビュー・ストレッチゴールの3つを軸とした絶対評価制度に刷新し、1on1による支援型マネジメントへの転換を図りました。「社員の挑戦と成長を促す評価制度」の実現を目的とした取り組みです。

企業事例2:アドビ株式会社

アドビ株式会社は、マネージャーの9割近くが従来の人事評価を「時間の無駄」と感じていたという社内調査を受け、2012年に年次業績評価制度を廃止。「チェックイン(Check-in)」と呼ばれるノーレイティング制度を導入しました。

従業員とマネージャーが常時対話しながら目標設定とフィードバックを繰り返す仕組みで、導入初年度にマネージャー全体の評価業務時間を約8万時間削減。離職率の30%低下という成果につながり、アドビ株式会社は「働きがいのある会社」ベストカンパニーに6年連続で選出されています。

企業事例3:カルビー株式会社

カルビー株式会社では、全従業員が上司と「Commitment & Accountability(C&A=約束と結果責任)」を締結する独自の評価制度を導入しました。年初に上司と部下が対話しながら目標を設定し、その達成度が賞与に反映される仕組みです。

役職者のC&Aは社内で共有されており、透明性の確保と従業員同士の自発的な協力関係の醸成につながっています。この制度を含む働き方改革全体を通じて、5年間で利益率を大幅に向上させた実績があります。

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まとめ

本記事では、ノーレイティングの基本的な意味から従来制度との違い、メリット・デメリット、向いている企業の特徴、成功させるためのポイントについて解説しました。

ノーレイティングとは、従業員へのランク付けを廃止し、継続的な対話とフィードバックによって成長を支援する人事評価制度です。従業員エンゲージメントの向上や管理コストの削減といったメリットがある一方、公平性の確保やマネージャーへの負担増加といった課題も存在します。

導入にあたっては、目的の明確化・マネージャー育成・仕組みの整備・待遇決定プロセスの設計という4つのポイントを押さえることが成功の鍵です。まずは自社の組織文化や課題を整理したうえで、自社に合った形での導入を検討してみてください。

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