2026/09/29
人材育成【2026最新】人事・労務業務のAI活用企業事例10選|導入効果や注意点も

人手不足や業務の複雑化を背景に、人事・労務業務にAIを取り入れる企業が増えています。一方で、「生成AIで具体的に何ができるのか分からない」「他社がどのように活用しているのか知りたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、人事・労務業務でAI活用が広がる背景や活用領域、導入のメリットを整理したうえで、実際の企業の活用事例を10件紹介します。あわせて、導入時の注意点や進め方も解説しますので、自社でのAI活用を検討する際の参考にしてください。
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人事・労務業務でAI活用が広がる背景
人事・労務業務でAI活用が広がっている背景には、労働人口の減少があります。採用難が続くなか、人事部門は限られた人員で採用・労務管理・人材育成など多岐にわたる業務をこなす必要があり、定型業務の効率化が急務となっています。
また、人的資本経営への関心の高まりから、人事データを活用した戦略的な意思決定も求められるようになりました。こうした状況のなか、生成AIの普及によって専門知識がなくても手軽にAIを使える環境が整い、人事・労務領域での導入が急速に進んでいます。
人事・労務業務におけるAIの活用領域
人事・労務業務におけるAIの活用領域は、採用から労務管理、人材育成まで多岐にわたります。主な領域と活用内容は以下のとおりです。
| 活用領域 | 業務の例 |
|---|---|
| 採用 | 求人票・スカウト文面の作成、応募書類のスクリーニング、面接日程の調整 |
| 勤怠・給与管理 | 勤怠データの集計・異常検知、長時間労働のアラート、給与計算のチェック |
| 人事評価・配置 | 評価データの分析、昇格候補者の抽出、配置シミュレーション |
| 人材育成 | 個人に合わせた研修プランの作成、学習コンテンツのレコメンド |
| 人事面談 | 面談の文字起こし・議事録作成、面談内容からの課題抽出 |
| 離職防止・従業員ケア | 退職面談やサーベイの分析による離職要因の特定、離職・メンタル不調の予兆検知 |
| 社内問い合わせ対応 | 就業規則や福利厚生に関する質問へのチャットボット回答 |
| 文書作成 | 社内規程の草案作成、従業員向け通知文・案内メールの作成 |
これらの領域で活用されるAIは、大きく2種類に分けられます。
一つは、蓄積されたデータをもとに予測や分類を行う従来型のAIで、応募者のスコアリングや離職予測などに用いられます。もう一つは、文章の生成や要約、分析を得意とする生成AIです。
人事・労務業務にAIを活用するメリット
人事・労務業務にAIを活用すると、単なる作業の効率化にとどまらず、意思決定の質や従業員の働きやすさにも良い影響をもたらします。AI活用の主なメリットについて、詳しく見ていきましょう。
- 定型業務の効率化で生産性が向上する
- データにもとづく客観的な判断ができる
- 従業員満足度や定着率の向上につながる
定型業務の効率化で生産性が向上する
人事・労務業務には、勤怠データの集計や書類作成、社内からの問い合わせ対応など、手間のかかる定型業務が数多く存在します。定型業務をAIに任せることで、作業時間を短縮できるだけでなく、入力ミスや確認漏れといった人的ミスも減らせます。
その結果、人事担当者は採用戦略の立案や組織づくり、従業員へのフォローなど、人にしかできない付加価値の高い業務に時間を割けるようになり、部門全体の生産性向上を実現可能です。
データにもとづく客観的な判断ができる
人事評価や配置、採用選考などの判断は、担当者の経験や勘、評価者との相性といった主観に左右されやすい傾向があります。AIを活用すれば、業績データや評価履歴、スキル情報などを横断的に分析し、一定の基準にもとづいた判断材料を得ることが可能です。
判断の根拠を示しやすくなるため、従業員の納得感が高まるほか、経営層への説明もしやすくなります。ただし、AIの分析結果はあくまで判断材料の一つとし、最終的な判断は人が行うことが重要です。
従業員満足度や定着率の向上につながる
AIの活用は、従業員が働きやすい環境づくりにも役立ちます。
たとえば、チャットボットによる問い合わせへの即時回答は従業員の手間を減らし、個人に合わせた研修プランはスキルアップを後押しします。また、勤怠データやサーベイ結果、面談記録などを分析すれば、不満や不調の兆しを早期に把握し、離職に至る前に対策を講じることも可能です。
こうした取り組みの積み重ねが、従業員満足度の向上と人材の定着につながります。
人事・労務業務のAI活用事例10選
人事・労務業務にAIを活用している企業の事例をご紹介します。自社の課題に近い事例から、AI活用のヒントを探してみてください。
- 【人事面談】ALSOK東京株式会社
- 【離職防止】河村電器産業株式会社
- 【採用支援】LINEヤフー株式会社
- 【採用選考】株式会社横浜銀行
- 【人事評価】JCOM株式会社
- 【人材配置】テルモ株式会社
- 【人材育成】株式会社かんぽ生命保険
- 【勤怠管理】イオンリテール株式会社
- 【昇格試験】日本管財ホールディングス株式会社
- 【社内問い合わせ】ユニリーバ
【人事面談】ALSOK東京株式会社
ALSOK東京株式会社では、上期・下期に全社員約1,000名との個別面談を実施しており、担当者1人で約300名を受け持つケースもあるなど、面談後の記録作成が大きな負担となっていました。また、面談で得た情報を分析や組織改善に十分活かせていない点も課題でした。
そこで、面談の録音データからAIが自動で文字起こしとサマリー作成を行う「HR pentest」を導入。議事録作成の工数削減を実感しているほか、現場の声を組織改善に活かす体制づくりを進めています。

【離職防止】河村電器産業株式会社
河村電器産業株式会社では、退職面談を実施していたものの、現場から共有される面談記録には「給与」「通勤」といった簡潔な記載が多く、退職の真因をつかめずにいました。そこで「HR pentest」を導入し、退職面談の内容をAIで記録・分析する仕組みを整備。
面談記録の情報量が大きく増え、導入後すぐに施策へつなげられています。部門ごとの傾向分析を進め、現場へのフィードバックにも活かしています。

【採用支援】LINEヤフー株式会社
LINEヤフー株式会社では、人事総務領域での生成AI活用を進めるなかで、採用業務にもAIを取り入れています。面接官のアサインや日程調整の自動化に加え、生成AIとの模擬面接を通じて確認すべき観点や評価基準を学べる面接官トレーニングを導入。
AI活用によって担当者の手作業を減らしながら、面接品質の底上げや採用戦略の精度向上を図っています。
【採用選考】株式会社横浜銀行
株式会社横浜銀行では、オープン・カンパニーやインターンシップといった企業紹介イベントの参加者選考に、対話型のAI面接をトライアル導入しました。AIを活用して応募者を公平かつ多角的に評価できる仕組みを取り入れることで、多様な人材の確保を目指しています。今後は、本選考を含む採用プロセスへの導入も視野に入れています。
【人事評価】JCOM株式会社
JCOM株式会社では、カスタマーセンターの電話応対に生成AIを導入し、通話内容の要約や顧客の感情分析を行っています。
分析を進めるなかで、応対の開始時と終了時の顧客感情の変化を示す指標が、顧客推奨度(NPS)と相関していることが判明。この指標をオペレーターの応対品質を評価する新たな重要指標として採用し、通話データにもとづく客観的な人事評価につなげています。
出典:カスタマーセンター領域で生成AIを人事評価・運用改善・育成に活用
【人材配置】テルモ株式会社
テルモ株式会社では、適所適材の人材配置と社員の多様な成長機会の提供を目指し、AIを活用したグループ内の人材マッチングに取り組んでいます。社員には自身の経験やスキルを活かせる公募中のポジションを、募集部門にはそのポジションで活躍が見込める社員を、AIがそれぞれ推薦する仕組みです。
試験導入を通じて実際に人事異動が成立しており、対象範囲をグループ全体へと段階的に広げています。
出典:テルモ、AIを活用したグループ内人財マッチングの取り組みを強化
【人材育成】株式会社かんぽ生命保険
株式会社かんぽ生命保険では、法人営業部門の社員の営業力向上を目的に、生成AIを活用したロールプレイングを全支店で導入しました。
お客さま役のAIアバターと模擬商談を行う仕組みで、時間や場所を問わず1人でも練習できます。生成AIが設定した評価基準に沿って点数やコメントを出力し、その結果を育成担当社員の指導と組み合わせることで、特に新入社員など営業経験の浅い社員の育成に役立てています。
出典:法人営業社員向けのAIロールプレイングサービスの導入 ~若手営業社員のアイデアを契機に全支店で利用を開始~
【勤怠管理】イオンリテール株式会社
イオンリテール株式会社では、従業員体験価値(EX)の向上を目的に、「イオン」「イオンスタイル」約350店舗で、チームの勤務シフトをAIが自動で起案する仕組みを導入しました。
従業員一人ひとりの勤務パターンをもとにモデルを作成し、勤務希望と月間労働時間を踏まえてAIが勤務計画を作成します。従業員は携帯端末から勤務希望の提出やシフトの確認ができ、職能のデータ化により補充人員の確保や技能教育にも活用しています。
出典:【イオンリテール】従業員12万人の「働き方が変わる」従業員体験価値(EX)を高める取り組みを全店へ
【昇格試験】日本管財ホールディングス株式会社
日本管財ホールディングス株式会社とその傘下の日本管財では、係長級から課長級への昇格試験の一部にAI面接を導入しました。
従来の小論文試験は文章力や表現力の評価が中心となり、受験者一人ひとりの資質や思考の違いを把握しにくいことが課題に。そこで小論文の代わりにAI面接を活用し、回答を多面的に分析することで、同社が求める課題認識力や理解力といった資質を可視化しています。
【社内問い合わせ】ユニリーバ
ユニリーバでは、社員からの人事関連の問い合わせに対応するAIチャットボットを導入しています。
手当や人事評価シートの書き方など、さまざまなテーマの質問にAIが回答する仕組みを実現。約16万人の社員から寄せられる定型的な問い合わせ対応をAIが担うことで、人事担当者はチームへの支援など、事業成果につながる業務に時間を使えるようになりました。
出典:How Unilever keeps human at the heart of organisation|Business Today
人事・労務業務にAIを活用する際の注意点
人事・労務業務にAIを活用すると多くのメリットが得られる一方で、扱う情報の性質上、注意すべき点もあります。AI活用を進めるうえで押さえておきたい、3つの注意点を解説します。
- セキュリティ対策を徹底する
- 最終判断は人が行う
- 従業員への説明と理解を得る
セキュリティ対策を徹底する
人事・労務業務で扱うデータには、評価や給与、健康状態、面談の記録など、機微な個人情報が多く含まれます。こうした情報を安易に外部のAIサービスへ入力すると、情報漏えいや、入力内容がAIの学習に利用されるといったリスクが生じかねません。
AIを導入する際は、入力してよい情報の範囲を社内ルールとして明確にするとともに、データの保存先やアクセス権限、暗号化などのセキュリティ対策が十分なツールを選ぶことが重要です。
最終判断は人が行う
AIは過去のデータをもとに分析や判断を行うため、学習データに偏りがあると、特定の属性の人に不利な結果を出してしまうおそれがあります。
特に採用や評価、昇格など人の処遇に関わる場面では、AIの結果をそのまま採用するのではなく、あくまで判断材料の一つとして扱い、根拠を確認したうえで最終的な判断は人が責任を持って行う体制を整えましょう。
従業員への説明と理解を得る
AIを人事業務に導入すると、従業員から「AIに評価されるのではないか」「情報がどう使われるのか分からない」といった不安の声が上がることがあります。こうした不安を放置したままでは、AI活用が現場に定着しにくくなります。
どの業務でどのようにAIを使うのか、データをどう扱うのかを事前に丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。導入後も問い合わせ窓口を設けるなど、透明性を保ちながら運用しましょう。
人事・労務業務にAIを導入する際の手順
人事・労務業務へのAI導入を成功させるには、いきなり全社で使い始めるのではなく、段階を踏んで進めることが大切です。AIを導入する際の基本的な手順を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- STEP1:解決したい課題を明確にする
- STEP2:自社に合ったAIツールを選ぶ
- STEP3:対象を絞って試験的に導入する
- STEP4:効果を検証し、運用ルールを整えて展開する
STEP1:解決したい課題を明確にする
まずは、採用、勤怠管理、人事評価、面談など、現状の人事・労務業務を洗い出し、「時間がかかっている」「担当者によって質にばらつきがある」といった課題を整理しましょう。そのうえで、AIに任せることで効果が見込める業務を絞り込みます。
「何のためにAIを導入するのか」という目的と対象業務を最初に明確にしておくことで、ツール選びや導入後の効果検証の軸がぶれにくくなります。
STEP2:自社に合ったAIツールを選ぶ
対象業務が決まったら、その課題を解決できるAIツールを比較検討します。必要な機能がそろっているかに加えて、既存の人事システムとの連携のしやすさ、個人情報を扱ううえで十分なセキュリティ対策、導入後のサポート体制、費用なども確認しましょう。
現場の担当者が、無理なく使いこなせる操作性かどうかも重要なポイントです。
STEP3:対象を絞って試験的に導入する
ツールが決まったら、いきなり全社に展開するのではなく、特定の部署や業務に限定して試験的に導入します。小さく始めることで、想定外のトラブルが起きても影響を最小限に抑えられ、現場の声を反映しながら改善を進められます。
また、この段階で対象となる従業員に、AIを使う目的やデータの扱い方を丁寧に説明しておくと、不安を和らげ、スムーズな定着につながるでしょう。
STEP4:効果を検証し、運用ルールを整えて展開する
試験導入の結果をもとに、業務時間の削減や品質の変化など、最初に定めた目的に対する効果を検証します。
あわせて、AIを活用する業務の範囲や、出力内容の確認方法、トラブル時の対応フローといった運用ルールを整備しましょう。そのうえで対象範囲を段階的に広げていきます。
導入後も定期的に効果を振り返り、改善を続けることが、AI活用を成果につなげるポイントです。
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まとめ
本記事では、人事・労務業務でAI活用が広がる背景や活用領域、導入のメリットを整理したうえで、実際の企業の活用事例を10件紹介しました。
人事・労務業務へのAI活用は、採用や人事評価、人材配置、育成、勤怠管理、社内問い合わせ対応など、幅広い領域に広がっています。AIを取り入れることで、定型業務の効率化やデータにもとづく客観的な判断が可能になり、従業員満足度や定着率の向上も期待できます。
一方で、個人情報の保護や最終判断を人が担う体制づくり、従業員への丁寧な説明も欠かせません。本記事の事例を参考に、自社の課題に合った業務から小さく始めてみてください。
































