2026/07/24
離職対策離職防止に有効なアンケートとは?項目例や分析方法、成功のコツも解説

離職防止に取り組もうとしても、何から手をつけるべきか判断が難しいものです。そこで最初の一歩として有効なのが、特別な仕組みを整えなくても始められる離職防止アンケートです。
本記事では、離職防止アンケートで確認すべき質問項目から、実施手順、結果の分析方法、分析後の施策例までを解説します。初めて導入する企業でも進められるよう、具体的な設問例とあわせて紹介していきます。
従業員の離職率に課題を感じていた方は、ぜひ本記事を役立ててください。
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離職防止アンケートとは?
離職防止に取り組むうえで、必ず押さえておきたいのがアンケートの位置づけです。まずは、離職防止アンケートの定義と注目される背景、混同されやすい退職者アンケートとの違いを整理しましょう。
- 離職防止アンケートの定義
- 退職者アンケートとの違い
- 離職防止アンケートが注目される背景
離職防止アンケートの定義
離職防止アンケートとは、従業員が抱える不満や不安を可視化し、離職の予兆を早期に把握するために実施する調査です。
実は「離職防止アンケート」という決まった手法が存在するわけではありません。実務では、従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイと呼ばれる調査を、離職防止という目的に合わせて設計・運用します。
重要なのは名称ではなく、離職につながる要因を的確に把握し、具体的な対策へつなげられる設計になっているかどうかです。
退職者アンケートとの違い
離職防止アンケートと混同されやすいものに、退職者アンケート(エグジットサーベイ)があり、両者の違いは対象者とタイミングです。
退職者アンケートは既に退職を決めた従業員に辞める理由を直接尋ねるもので、精度の高い情報が得られる一方、その人の離職を止めることはできません。対して離職防止アンケートは在籍中の従業員が対象で、不満が退職の決断に至る前に把握し、手を打つことを目的とします。
両者は対立するものではなく、退職者の声から得た知見を在籍者向けの設問設計に活かすことで、より実効性の高い調査になります。

離職防止アンケートが注目される背景
近年、少子高齢化による労働人口の減少で採用競争が激化し、人材の補充が難しくなっています。厚生労働省の『令和6年 雇用動向調査』によると、1年間の離職率は14.2%にのぼり、年間で従業員のおよそ7人に1人が職場を離れている計算です。
| 対象 | 主な離職理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 男性 | 定年・契約期間の満了 | 14.1% |
| 男性 | 給料等収入が少なかった | 10.1% |
| 女性 | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 12.8% |
| 女性 | 職場の人間関係が好ましくなかった | 11.7% |
※「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」を除いた上位項目
待遇や働き方、人間関係といった職場環境に起因する離職が一定の割合を占めており、男女で理由の傾向が異なる点も見て取れます。また、前年からの上昇幅が最も大きかったのは、男性では「会社の将来が不安だった」(+2.2ポイント)、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(+1.7ポイント)でした。
このような不満や不安は、日常業務の中では表面化しにくいのが実情です。従業員の声を定期的に収集し、離職を未然に防ぐ手段としてアンケートが注目されているのは、こうした背景によるものです。
離職防止アンケートの項目例
離職防止アンケートで確認すべき項目は、大きく6つに分けられます。各項目の狙いと、そのまま使える質問例を紹介します。
自社の状況に応じて質問を取捨選択し、優先度の高い領域から確認していくと良いでしょう。
- 人間関係に関する質問項目
- 働き方に関する質問項目
- 評価・報酬に関する質問項目
- キャリアに関する質問項目
- 経営への信頼に関する質問項目
- 継続就業意向に関する質問項目
人間関係に関する質問項目
職場の人間関係は、離職理由の上位に挙がる代表的な要因です。なかでも上司との関係は影響が大きく、業務の相談ができない、意見を聞いてもらえないといった状態が続くと、仕事そのものへの意欲低下につながります。
アンケートを設計する際は、上司との関係と同僚との関係を必ず分けて尋ねてください。まとめて聞くと、どちらに課題があるのかを判別できず、施策につなげられなくなります。
働き方に関する質問項目
長時間労働や休暇の取りにくさは、離職理由として常に上位に挙がる領域です。
確認すべきは実際の残業時間ではなく、従業員がその働き方を負担と感じているかどうかという主観です。同じ労働時間でも、業務の裁量や繁閑の波によって受け止め方は大きく変わります。
また、業務負荷は心身の不調として現れる前に「疲れが取れない」といった感覚として自覚されるため、その段階で捉えられれば早期の対応が可能になります。
評価・報酬に関する質問項目
給与への不満は離職理由として頻繁に挙がりますが、金額そのものよりも「評価の納得感」が離職につながるケースが少なくありません。何を基準に評価されているのかが分からない、成果を出しても処遇に反映されないといった状態は、金額の多寡以上に意欲を損ないます。
アンケートでは、報酬水準への満足度と評価プロセスへの納得感を分けて尋ねてください。前者は原資の問題で即座には動かせませんが、後者は基準の明示やフィードバックの改善で対応できるため、施策の打ちやすさが大きく異なります。
キャリアに関する質問項目
現在の仕事に手応えを感じられるか、そしてこの会社で成長できる見通しがあるかは、定着を左右する重要な要素です。待遇に不満がなくても、業務が単調で裁量がない、数年後の自分の姿を描けないといった状態が続けば、転職を意識するきっかけになります。
特に若手層では、成長実感の乏しさが離職の引き金になりやすい傾向があります。設問は現在の充実度を測るものと、将来の見通しを測るものの両方を含めると、どちらに課題があるのかを切り分けられます。
経営への信頼に関する質問項目
会社の先行きへの不安は、近年上昇傾向にある離職理由です。個人の待遇や人間関係に問題がなくても、事業の方向性が見えない、経営の意思決定に納得できないといった状態は、静かに定着意欲を削いでいきます。
この領域は日常の業務では話題に上りにくく、本人も明確な不満として自覚していないことが多いため、アンケートで確認する意義が特に大きい項目です。
継続就業意向に関する質問項目
各領域の設問に加えて、職場全体への評価を問う総合的な設問を設けましょう。これらは分析の軸となる項目で、他のカテゴリの回答との相関を見ることで、どの領域が定着に強く影響しているかを特定できます。
すべての課題に同時に着手することは難しいため、優先順位を判断する材料として不可欠です。なお、継続就業意向は答えにくい設問でもあるため、匿名性の担保を事前に伝えたうえで実施してください。
離職防止アンケートの実施手順
アンケートは、設計から改善までの流れを押さえておくことで成果につながります。離職防止アンケートを実施する際の基本的な進め方を、5つのステップに分けて解説します。
- ①実施の目的を明確にする
- ②質問項目と実施方法を設計する
- ③従業員に周知して配布する
- ④集計・分析して課題を特定する
- ⑤結果を共有して改善につなげる
①実施の目的を明確にする
最初に決めるべきは、何のためにアンケートを実施するのかという目的です。全社的な離職率の改善なのか、特定部署の課題把握なのか、若手層の定着なのかによって、聞くべき項目も対象者も変わってきます。
目的が曖昧なまま設問を並べると、結果を見ても何から手をつければよいのか判断できず、実施したこと自体が目的化してしまいがちです。継続就業意向の数値を次回までに改善する、といった形で指標を決めておくと、施策の効果を検証しやすくなります。
②質問項目と実施方法を設計する
質問数は多いほど詳しく把握できますが、負担が大きいと回答の質が落ちるため、初回は30問前後、定期的に実施する場合は10問程度が目安です。実施方法は、紙とWebのいずれか、あるいは専用ツールの利用を検討します。
頻度については、年1〜2回のまとまった調査で全体像を把握し、月1回程度の短い調査(パルスサーベイ)で変化を追う併用が現実的でしょう。あわせて、部署や勤続年数といった属性項目も設定しておくと、後の分析で課題を絞り込めます。
③従業員に周知して配布する
回答の質は、事前の伝え方で大きく変わります。実施の目的、結果の使い道、匿名性の扱いを、配布前に必ず説明してください。
人事評価には影響しないこと、個人が特定される形では扱わないことを明確に伝えないと、当たり障りのない回答ばかりが集まり、本音は見えてきません。回答率を高めるには、業務時間内に回答時間を確保する、回答期限を1〜2週間程度に設定して途中でリマインドを送る、といった配慮が有効です。
④集計・分析して課題を特定する
回答が集まったら、全体の傾向を把握したうえで、部署別や勤続年数別に分けて課題の所在を絞り込みます。平均値だけを見ていると、特定の層に偏った不満を見落としかねません。
数値の高低そのものよりも、どこに手を打てば定着に効くのかという優先順位を見極めることが重要です。
⑤結果を共有して改善につなげる
分析結果は必ず従業員へ共有してください。回答したのに何も知らされない状態が続くと、次回以降の協力が得られなくなります。
すべてを開示する必要はありませんが、明らかになった課題と、それに対して会社がどう取り組むのかは示すべきです。そのうえで施策を実行し、一定期間を置いて再度アンケートを実施します。
離職防止アンケートは一度で完結するものではなく、実施と改善を繰り返すことで精度が高まっていきます。
離職防止アンケート結果の分析方法
アンケートは配布するだけでなく、集計結果を分析することで初めて打ち手につながります。離職防止アンケートの基本的な分析方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 単純集計で全体の傾向をつかむ
- クロス集計で課題の所在を絞り込む
- 継続就業意向との相関から優先を見極める
- 自由記述から回答の背景を読み取る
単純集計で全体の傾向をつかむ
まずは質問項目ごとに回答を集計し、全体の傾向を確認します。項目ごとの平均点を並べれば、どの領域に課題がありそうかの当たりをつけられます。
このとき注意したいのが、平均値だけで判断しないことです。同じ平均3.0でも、全員が3を選んだ場合と、1と5に評価が割れた場合とでは意味がまったく異なります。
回答の分布もあわせて確認し、評価が二極化している設問には印をつけておきましょう。
クロス集計で課題の所在を絞り込む
全体の傾向をつかんだら、部署・勤続年数・役職・雇用形態といった属性ごとに集計し直します。全社平均では問題なく見えても、特定の部署や入社3年目までの層だけが著しく低い、といったケースは珍しくありません。
課題の所在が特定できれば、打つべき施策も具体的になります。離職理由の傾向は属性によって異なるため、全体平均だけで判断すると本当に手を打つべき層を見誤ります。
継続就業意向との相関から優先を見極める
点数の低い項目をすべて改善できれば理想的ですが、人手にも予算にも限りがあります。そこで、継続就業意向や総合満足度といった総合指標と、各質問の回答との関連の強さを確認します。
関連が強い項目ほど、改善したときに定着へ与える影響が大きいと考えられるため、そこから着手するのが効率的です。点数が低くても総合指標との関連が弱い項目は、優先度を下げる判断もできます。
自由記述から回答の背景を読み取る
数値からは課題の所在が分かっても、なぜそうなっているのかまでは見えません。そこで役立つのが自由記述です。
すべてに目を通すのが難しい場合は、頻出する語句を拾う、評価が低かった層の記述から優先して読む、といった方法で効率化できます。数値では同じ低評価でも、業務量そのものが問題なのか、配分の偏りが問題なのかで打ち手は変わります。
離職防止アンケートの分析後の施策例
離職要因となっている課題が特定できたら、次は具体的な改善に移ります。アンケートで見えてきた課題の領域ごとに代表的な施策を紹介しますので、自社で実行できるものを選んでいきましょう。
- コミュニケーションの改善に関する施策例
- 労働環境の見直しに関する施策例
- 評価制度の見直しに関する施策例
- キャリア支援に関する施策例
コミュニケーションの改善に関する施策例
人間関係や上司との関係に低い評価が集まった場合は、対話の機会そのものを増やす取り組みが有効です。重要なのは、個人の相性の問題として片づけないことです。
相談する場がない、評価や方針が伝わっていないといった仕組み上の不足が原因であるケースが多く、その場合は制度で補えます。会社の方向性への不安が見られた場合も同様で、事業内容そのものより、情報が現場まで届いていないことが原因になっている場合が少なくありません。
労働環境の見直しに関する施策例
労働時間や業務負荷への不満が見られた場合は、まず業務量の実態を把握することから始めます。特定の人に業務が集中していないか、属人化している作業がないかを確認し、配分の見直しや標準化を進めましょう。
制度面では、休暇を取得しやすい雰囲気づくりや、勤務形態の選択肢を広げる取り組みが効果的です。ただし制度を設けるだけでは利用されないため、管理職が率先して活用する、取得状況を可視化するといった運用面の工夫も必要になります。
評価制度の見直しに関する施策例
評価への不満が見られた場合、必要なのは必ずしも賃上げではありません。何を基準に評価されているのかが分からない、結果の説明がないといった不透明さが不満の実態であることが多く、その場合は基準の明示とフィードバックの充実で改善が見込めます。
給与水準そのものに課題がある場合は原資の確保が前提となるため、すぐには動かせません。まずは運用面で対応できる部分から着手し、制度改定は中長期の計画として進めるのが現実的です。
キャリア支援に関する施策例
やりがいや成長実感の乏しさは、若手層の離職につながりやすい要因です。この領域への打ち手は、将来像を描けるようにすることと、現在の業務に手応えを持てるようにすることの2方向に分かれます。
前者はキャリアパスの提示や研修制度、後者は担当業務の裁量拡大や新しい役割の付与が中心となります。本人の希望を把握しないまま機会を用意しても噛み合わないため、キャリア面談などで意向を確認したうえで進めることが大切です。
離職防止アンケートを成功させるコツ
アンケートは、実施すれば成果が出るというものではありません。回答が集まらない、本音が見えない、結果を活かせないといった課題は多くの企業で起こります。
離職防止アンケートを機能させるために押さえておきたい、3つのポイントを解説します。
- 匿名性を担保する
- 実施して終わりにしない
- 継続して変化を追う
匿名性を担保する
当たり障りのない回答ばかりが集まってしまうのは、匿名性への不安が原因であることがほとんどです。回答内容が上司に伝わるかもしれない、評価に影響するかもしれないという懸念があれば、従業員は率直に答えられません。
人事評価とは切り離して扱うこと、個人が特定される形では集計しないことを、実施前に明確に伝えてください。属性項目を細かく設定しすぎると、部署と勤続年数の組み合わせから個人が推測できてしまう点にも注意が必要です。
実施して終わりにしない
アンケートの分析結果を共有しないままだと、現場から見れば時間を割いて回答したのに何も起きなかったという経験になり、次回以降の協力は得にくくなります。回答率の低下だけでなく、会社への不信感にもつながりかねません。
すべての課題に対応する必要はありませんが、明らかになった課題と今後の方針は必ず共有し、最低でも一つは目に見える形で着手してください。実行力を確保するには、実施の段階から経営層を巻き込み、施策の決裁ルートを想定しておくことも有効です。
継続して変化を追う
初回のアンケート結果は、それ単体では良し悪しを判断できません。初回は現状を記録する基準値と捉え、継続して実施することで意味が生まれます。
その際は、設問の中心となる部分を変えないでください。毎回設問を作り替えると、数値が変化しても回答の傾向が変わったのか設問の影響なのか判別できなくなります。
一方、頻度が高すぎたり設問数が多すぎたりすると回答が形骸化するため、負担とのバランスを見ながら運用しましょう。
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まとめ
本記事では、離職防止アンケートで確認すべき質問項目から、実施手順、結果の分析方法、分析後の施策例までを解説しました。
離職防止アンケートは、実施すること自体が目的ではありません。何を明らかにしたいのかを定めたうえで設問を設計し、結果を分析して課題を特定し、改善につなげて初めて意味を持ちます。
そして、その効果は次回のアンケートで検証されます。まずは自社で優先度の高い領域から質問項目を選び、小さな規模でも実施してみてください。
































