2025/03/03
離職対策リテンション施策とは?人事が知っておくべき取り組み内容と事例を紹介

労働市場の流動化が進む中、優秀な人材を確保するためには、適切なリテンション施策が欠かせません。
本記事では、人事領域におけるリテンション施策の意味や具体例について解説しています。企業がリテンション施策を講じるメリットやポイント、離職率改善に成功した企業の事例も紹介していますので、きっと役立つはずです。
適切なリテンション施策を導入し、社員が安心して働ける環境を整えていきましょう。
リテンション施策とは?
リテンション(retention)とは、英語で「保持」を意味する言葉です。リテンション施策とはどのような取り組みを指すのか、詳しく見ていきましょう。
人事領域におけるリテンション施策
人事領域におけるリテンション施策とは、企業が優秀な人材の離職を防ぎ、長期的に定着させるための施策のことを指します。
近年、企業の人材確保がますます難しくなっており、優秀な社員の流出を防ぐ重要性が高まっています。特に、日本では少子高齢化による労働人口の減少が進み、採用コストが増加しているため、既存の社員を定着させることが経営の重要課題です。
また、働き方の多様化や価値観の変化により、従業員の満足度を向上させる施策が求められています。
マーケティング領域におけるリテンション施策
マーケティングにおけるリテンション施策とは、既存顧客との関係を維持し、長期的なロイヤルティを高めるための戦略のことです。
競争が激化する現代の市場において、新規顧客の獲得コストが増加しており、既存顧客の維持がより重要視されています。特に、サブスクリプション型ビジネスやEC市場では、継続利用やリピート購入が企業の収益を左右するため、パーソナライズドな顧客対応やロイヤルティプログラムの導入が進んでいます。
離職率計算エクセルテンプレート

従業員人数、離職者数などを入力することで年間の離職率を簡易に計算することができます。
無料ダウンロード人事におけるリテンション施策の種類
人事におけるリテンション施策は、大きく分けて以下の2つに分類されます。
- 金銭的リテンション施策
- 非金銭的リテンション施策
それぞれのリテンション施策について、詳しく見ていきましょう。
金銭的リテンション施策
金銭的なインセンティブは、従業員の満足度やモチベーションを高め、離職を防ぐ有効な手段です。特に、競争の激しい業界では、給与や福利厚生の充実がリテンション施策の鍵となります。
企業が取り組む主な金銭的リテンション施策の具体例は以下の通りです。
金銭的な施策は即効性が高いものの、長期的に効果を維持するには他の要素と組み合わせることが重要です。
非金銭的リテンション施策
金銭的な報酬だけでなく、働きやすい環境やキャリアの成長機会を提供することも、リテンションには欠かせません。特に、エンゲージメントや企業文化の強化が重視されています。
企業が取り組む主な非金銭的リテンション施策の具体例は以下の通りです。
企業がリテンション施策に取り組むメリット
適切なリテンション施策を講じることで、企業は様々なメリットを得ることが可能です。人事領域においてどのようなメリットを得られるのか、代表的なものについて解説します。
- 離職率低下による採用コストの削減
- スキルやノウハウの蓄積
- 従業員エンゲージメントの向上
- 組織の持続的な成長
離職率低下による採用コストの削減
リテンション施策を適切に実施することで、離職率を低下させ、新たな人材の採用にかかるコストを削減できます。
企業が新たな人材を採用する際には、求人広告費や人材紹介手数料、面接・選考にかかる時間など、多大なコストが発生します。さらに、新入社員のオンボーディングや研修にも相応の費用と時間が必要です。
一方で、既存社員が長く定着すれば、採用関連の支出を抑えつつ、安定したチーム作りが可能になります。また、離職率の低下は企業の魅力を高め、結果として優秀な人材の応募増加にもつながるでしょう。
スキルやノウハウの蓄積
長期的に社員が定着することで、企業内に専門知識やノウハウが蓄積され、競争力の向上につながります。
業界特有の知識や社内の業務プロセスに関する経験は、新しい社員がすぐに身につけられるものではありません。リテンション施策を実施し、従業員の定着率を高めることで、企業の資産ともいえるスキルの流出を防ぐことが可能です。
また、長年培ったノウハウが社内に蓄積されることで、業務の効率化やイノベーションの創出が促進され、企業全体の生産性向上にも寄与します。
従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントとは、社員が企業の目標やビジョンに共感し、自発的に貢献しようとする意欲を指す言葉です。
リテンション施策によって働きやすい環境を整えることで、社員のエンゲージメントが向上し、企業への愛着が強まります。例えば、キャリア成長の支援や社内コミュニケーションの活性化により、社員のモチベーションが向上します。
また、組織文化を重視し、心理的安全性を確保することで、社員が安心して働ける職場環境を作ることができるでしょう。エンゲージメントが高い社員は離職しにくく、生産性の向上にも貢献します。
組織の持続的な成長
社員の定着率が高まり、エンゲージメントが向上することで、企業の持続的な成長が可能になります。組織が安定することで、中長期的な戦略を実行しやすくなり、新たな市場開拓や事業拡大にもつながるでしょう。
また、長期的に働く社員が増えることで、企業文化の醸成が進み、強固な組織基盤が形成されます。リテンション施策を通じて、単なる離職防止ではなく、企業全体の発展を支える仕組みを構築することが重要です。
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リテンション施策に成功した企業の成功事例
リテンション施策を講じたいものの、なかなか自社に有効な対策が思い浮かばずお困りの方も多いと思います。リテンション施策で離職率の改善に成功した、企業の取り組み事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- カネテツデリカフーズ株式会社
- 株式会社レオパレス21
- サイボウズ株式会社
カネテツデリカフーズ株式会社
カネテツデリカフーズ株式会社では、新入社員の早期離職が課題となっていました。
この課題に対し、同社は新入社員研修を見直し、入社2~3年目の先輩社員がマンツーマンで6ヶ月間指導する体制を導入。さらに、指導内容や目標を定期的に見直し、次年度の研修に反映させる仕組みを構築しました。
これらの施策により、入社3年以内の離職率は50%から10%前後へと改善に成功。継続的な研修内容の見直しと、先輩社員による手厚い指導が、新入社員の定着に効果を上げています。
参考:厚生労働省「若者が定着する職場づくり取組事例集」
株式会社レオパレス21
株式会社レオパレス21は、リーマンショック後に離職率が15%以上と高い水準にありました。
この状況を改善するため、同社は部門や役職に応じた研修の導入、労働時間の削減、22時にシステムをダウンさせることで残業を防止する施策などを実施。また、人事部とは別に『ワークライフバランス推進室』を設置し、働きやすい環境づくりを推進しました。
これらの取り組みの結果、離職率は9%弱まで改善され、その後も3年連続で離職率の低下を達成しました。研修制度の充実と労働環境の見直しが、社員の定着率向上に大きく貢献しています。
参考:3年間で離職率が劇的に改善! レオパレス21はなぜ変われたか?
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、2005年に離職率が28%に達していました。
この課題に対し、同社は『選択型人事制度』を導入し、在宅勤務や短時間勤務、副業の許可など、多様な働き方を選択できる環境を整備しました。また、社内部活動の支援や、育児・介護休暇の充実など、社員のライフスタイルに合わせた柔軟な制度を導入しています。
これらの施策により、離職率は大幅に改善されて4%程度の低水準を実現。多様な働き方を尊重する企業文化が、社員の定着率向上に寄与しています。
参考:離職率28%から4%へ サイボウズはいかにして“共創する組織”をつくり上げたのか
人事がリテンション施策を成功させるポイント
人事のリテンション施策が的外れなものになってしまうと、期待していた効果は得られません。どのような点に注意すれば成功するのか、リテンション施策のポイントについて見ていきましょう。
- 現場のニーズを正確に把握する
- 金銭的&非金銭的施策をバランスよく組み合わせる
- 継続的に施策を見直して改善を行う
現場のニーズを正確に把握する
リテンション施策を成功させるためには、まず現場のニーズを正確に把握することが不可欠です。
社員が求めるものは一律ではなく、キャリアのステージやライフスタイルによって異なります。そのため、定期的なアンケートや1on1ミーティングを実施し、リアルな声を収集することが重要です。
例えば、「給与や福利厚生の向上を求める層」と「キャリア成長や働きがいを重視する層」では、適した施策が異なります。ニーズを把握せずに画一的な施策を導入しても、十分な効果が得られません。
従業員の価値観の変化を捉えながら、柔軟に施策を展開することが、長期的な定着につながります。
金銭的&非金銭的施策をバランスよく組み合わせる
リテンション施策では、給与やボーナスといった金銭的要素と、キャリア支援や職場環境の改善といった非金銭的要素をバランスよく組み合わせることが重要です。
金銭的施策は即効性があるものの、持続的な満足感を生むとは限りません。一方、非金銭的施策は従業員の働きがいやエンゲージメントを高め、長期的な定着に寄与します。
従業員のニーズに応じて適切なバランスを見極めることで、効果的なリテンション施策を実現できるでしょう。
継続的に施策を見直して改善を行う
リテンション施策は一度導入して終わりではなく、継続的に見直しと改善を行うことが成功の鍵となります。市場環境の変化や従業員の価値観の変遷に応じて、施策の効果を定期的に測定し、必要に応じて修正を加えることが重要です。
具体的には、従業員満足度調査や離職者へのヒアリングを通じて、施策の課題を洗い出し、改善策を講じることが有効です。また、成功事例を社内で共有し、他部署にも展開することで、全社的なリテンション強化につなげることができます。
PDCAサイクルを回しながら、より実効性の高い施策へと進化させることが、長期的な人材定着につながります。
まとめ
本記事では、人事領域におけるリテンション施策の意味や具体例、メリット、ポイント、離職率改善に成功した企業の事例について解説しました。
リテンション施策は単なる離職防止にとどまらず、企業の競争力向上にも寄与する重要な取り組みです。適切な施策を実施することで、採用コストの削減、スキルやノウハウの蓄積、従業員エンゲージメントの向上、そして組織の持続的な成長につながります。
また、成功事例からも分かるように、企業ごとに最適な施策は異なります。従業員のニーズを正確に把握し、金銭的・非金銭的施策をバランスよく組み合わせ、継続的に見直しを行うことが成功の鍵となります。
人材不足が深刻化する現代において、優秀な社員が長く活躍できる環境を整えることは、企業の発展に不可欠です。自社に合ったリテンション施策を導入し、働きやすい職場づくりを進めていきましょう。