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【事例から学ぶ】サクセッションプランとは?作り方や課題、成功のポイントも

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近年、企業の持続的成長を支えるサクセッションプラン(後継者育成計画)への注目が高まっています。経営人材の不在は企業の競争力に直結するため、計画的なリーダー育成は重要な経営戦略の一つです。

本記事では、サクセッションプランの基本的な概念をはじめ、作り方や成功のポイントについて解説しています。サクセッションプランに取り組む企業の事例、策定の際によくある課題、メリット・デメリットも紹介していますので、ぜひお役立てください。

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サクセッションプランとは?

まずはサクセッションプランの基本的な知識として、以下の3点から詳しく見ていきましょう。

  • サクセッションプランの意味と概要
  • サクセッションプランの目的
  • サクセッションプランが重要視される背景

サクセッションプランの意味と概要

サクセッションプランとは、将来的な経営幹部や重要ポジションの後継者を計画的に育成・選定する仕組みです。後継者育成計画とも呼ばれ、近年では大企業だけでなく、中小企業でも注目が高まっています。

企業の持続的な成長と安定を図るため、経営層やマネジメント人材が退任・異動した際に、スムーズな交代が可能となるよう準備を行います。単なる人材の置き換えではなく、企業理念や戦略を継承しながら、組織の未来を見据えた後継者を確保する取り組みです。

サクセッションプランの目的

サクセッションプランの主な目的は、重要ポジションの空白リスクを最小限に抑え、経営の継続性を確保することです。

特に経営層や専門的スキルを持つ人材が突然退職した場合、企業活動に大きな影響を及ぼす恐れがあります。また、後継者を計画的に育成することで、人材のモチベーション向上や組織の透明性、成長機会の均等化にもつながるでしょう。

企業のビジョンや文化を継承しつつ、将来にわたる競争力の維持・強化を図るのが、サクセッションプランの狙いです。

サクセッションプランが重要視される背景

サクセッションプランが注目される背景には、経営人材の高齢化や人材の流動化が挙げられます。

特に団塊世代の大量退職や若手の早期離職などにより、企業は優秀な後継者確保の必要性に迫られています。また、企業を取り巻く経営環境の変化が激しさを増す中、迅速な意思決定や戦略実行力を維持するためには、計画的な人材継承が欠かせません。

さらに、ESGやガバナンスの観点からも、透明性のある人材戦略が企業価値の向上に直結する時代となっています。

サクセッションプランを策定するメリット・デメリット

企業がサクセッションプランを策定することで、様々なメリットが生まれます。その一方で、多少のデメリットも存在するため、それぞれどのような影響があるのか詳しく見ていきましょう。

サクセッションプランを策定するメリット

重要ポジションの空白を防げる

サクセッションプランを策定しておくことで、経営層や管理職が退任・異動した際にもスムーズな人材交代が可能になります。急な欠員による業務の混乱を防ぎ、安定した組織運営を維持できるのが大きな利点です。

人材の成長機会を明確にできる

将来的なキャリアパスを明示することで、従業員は自分の成長イメージを持ちやすくなります。組織内での目標が明確になるため、自己研鑽やスキルアップへの意欲も高まり、結果的に人材の定着や育成にもつながります。

経営の継続性・組織力の強化につながる

理念やノウハウ、企業文化を確実に継承できるため、経営の一貫性が保たれます。内部人材の育成によって、組織全体の結束力が強まり、長期的に持続可能な経営体制を構築することが可能になります。

サクセッションプランを策定するデメリット

対象者の選定が難しく不公平感を生む可能性

後継者候補の選定基準が不明瞭だったり、特定の人材に偏った評価がされたりすると、他の社員から不満が出ることがあります。透明性と公平性を確保しないと、逆に組織内の信頼関係が損なわれるリスクがあるため要注意です。

過度な期待やプレッシャーを与えることがある

候補者に対して過大な責任感を求めすぎると、本人にとって精神的な負担となる可能性があります。周囲からの期待も大きくなるため、本人がプレッシャーに押しつぶされてしまうリスクには注意が必要です。

サクセッションプランの作り方・策定手順

サクセッションプランの基本的な作り方は、以下の手順で進めます。

  1. 重要ポジションを特定する
  2. 求められるスキル・資質を明確にする
  3. 候補者を選定する
  4. 育成計画を立てて実行する
  5. 定期的に進捗を評価・見直す

各ステップのポイントも紹介しますので、自社でサクセッションプランを策定する際の参考にしてください。

1.重要ポジションを特定する

まずは、サクセッションプランの対象となる重要ポジションを明確にする必要があります。

経営層や事業責任者、専門性の高い技術職など、組織の中核を担う役職が対象です。将来の組織図や事業計画も踏まえながら、「欠員が出た場合に大きな影響がある役割」はどこかを洗い出しましょう。

人数や役職の大小に関わらず、組織運営に不可欠なポジションを優先的に選定することが重要です。

2.求められるスキル・資質を明確にする

次に、各ポジションに求められるスキルや行動特性、リーダーシップのタイプなどを具体的に定義します。

単に業務スキルや経験年数だけでなく、価値観や判断力、対人能力といった定性的な要素も重要です。後継者としてふさわしい人物像を明確にすることで、候補者選定や育成方針の方向性が定まり、客観性と納得感のあるサクセッションプランが設計できます。

3.候補者を選定する

定義された要件をもとに、現在の社内人材から後継候補者を選定します。

人事評価や上司の推薦、360度評価など、複数の視点から総合的に判断することが重要です。また、候補者本人のキャリア志向や意思も尊重しなければなりません。

選定時は一人に絞るのではなく、複数名を候補としてリストアップすることで、将来的な変化にも柔軟に対応できます。

4.育成計画を立てて実行する

候補者が後継者として必要なスキルや経験を身につけられるよう、育成計画を設計して段階的に実行します。

OJTやローテーション、メンター制度、社内外の研修などを組み合わせ、実践を通じた学習機会を提供します。育成は短期的なものではなく、中長期で見て計画的に行うことが重要です。

進捗に応じて適宜フィードバックを行い、能力開発を支援しましょう。

5.定期的に進捗を評価・見直す

育成の途中段階では、定期的な評価とフィードバックを実施し、候補者の成長度や適性を確認します。

状況の変化や本人の志向の変化に応じて、育成内容の修正や候補者の再選定を行うことも必要です。プランを一度立てたら終わりではなく、継続的なモニタリングと柔軟な調整によって、現実に即した効果的なサクセッションプランが維持されます。

6.正式な引き継ぎと承認プロセスを整備する

育成を終えた後は、実際の引き継ぎをスムーズに行うための体制を整備します。

役割や権限の移譲手続き、現任者との業務の共有、組織内への正式な周知などが重要なステップです。また、経営陣や取締役会などによる承認プロセスを明確にすることで、透明性と組織内の納得感を確保します。

計画の「完了」ではなく、次の継続的な育成のサイクルへとつなげる視点も大切です。

サクセッションプランの好事例

近年では、国内でも多くの企業がサクセッションプランを導入しています。他社がどのようなプランニングを行っているのか、事例から自社の取り組みの参考にしていきましょう。

  • 事例① 株式会社りそな銀行
  • 事例② 日産自動車株式会社
  • 事例③ カゴメ株式会社
  • 事例④ 花王株式会社

事例① 株式会社りそな銀行

株式会社りそな銀行では、企業価値の持続的な向上を目的に、2007年よりサクセッションプランを導入しました。

社長を含む役員層の継承において、選抜・育成の透明性を重視し、外部コンサルタントの助言を活用した客観的な評価を実施。評価内容は指名委員会に報告され、委員自身も育成プログラムに参加するなど、多面的な人材見極めが行われています。

さらに、社外取締役が過半数を占める取締役会でも議論されることで、公正な人材育成が推進されています。評価基準には7つのコンピテンシーを設定し、求められる人材像を明確に共有しているのが特徴です。

事例② 日産自動車株式会社

日産自動車では、グローバルなビジネスリーダーの育成を目的に、2000年からサクセッションプランを本格的に導入しています。

CEOを含む役員で構成される人事委員会「NAC(Nomination Advisory Council)」が中心となり、次世代リーダーの候補発掘や育成計画を策定。地域や機能ごとのNACも設置され、各分野で後継者育成を推進しています。

さらに、キャリアコーチ制度を導入し、各部門の人材育成を支援。コーチは育成計画の立案とサクセッションプランの提案も担い、個人の成長と組織の継続性を両立させました。

事例③ カゴメ株式会社

カゴメ株式会社では、持続的な企業価値の創出に向けて次世代幹部の育成を重要課題と位置づけ、選抜と育成のプロセスを整備しています。

育成はOff-JTとOJTを組み合わせた教育プログラムに加え、行動評価による選抜を組み合わせて実施。役員・部長層に対し階層別に展開されています。

候補者の選抜や育成計画は社内の人材開発委員会が担当し、経営陣の選任に際しては報酬・指名諮問委員会の審議を経て取締役会に付議される体制を構築。これにより、透明性と客観性のある後継者育成を実現しました。

事例④ 花王株式会社

花王株式会社では、社長執行役員の後継者計画を含む人財戦略を経営の最重点課題と位置づけ、取締役会や取締役・監査役選任審査委員会で継続的に議論を行っています。

次世代の経営環境を見据えた人材要件を定め、後継者候補リストを定期的に更新。候補者の育成にはスキルマトリクスを活用し、必要な知見・経験の強化を図っています。

委員会では育成計画の進捗状況を社長が報告し、適切な検討と更新が答申される体制を整備。加えて、委員が候補者を深く理解する機会の充実も図られています。

サクセッションプランの成功のポイント

サクセッションプランを策定して実行フェーズへ移行しても、なかなか上手くいかないケースも少なくありません。どのような点に注意すべきか、成功のためのポイントを抑えておきましょう。

  • 経営陣と人事部門の連携を強化する
  • 透明性のある選定プロセスを確保する
  • 継続的な育成と評価の仕組みを整える

経営陣と人事部門の連携を強化する

サクセッションプランの成功には、経営陣と人事部門の密接な連携が不可欠です。

経営層が組織の将来像を描き、人事部門が人材の現状や育成方針を具体化することで、実現性の高い計画が策定されます。また、経営層が自ら後継者育成に関与する姿勢を見せることで、組織全体にプランの重要性が伝わり、社員の納得感や協力体制も強化されます。

トップダウンとボトムアップのバランスを取りながら進めることがポイントです。

透明性のある選定プロセスを確保する

後継者の選定においては、評価基準や選考過程をできる限り明確にし、関係者が納得できるプロセスを整えることが重要です。

不透明な選定は、社内の不信感や不公平感につながり、候補者自身のモチベーション低下にもつながる可能性があります。評価項目の基準化や複数の視点を取り入れた判断、必要に応じたフィードバックの提供など、公正性を担保する仕組みが成功の鍵となります。

継続的な育成と評価の仕組みを整える

サクセッションプランは一度立てて終わりではなく、継続的に運用・見直しが必要です。

候補者の能力や志向、組織の状況は時間とともに変化します。そのため、定期的な育成機会の提供や進捗の評価、フィードバック体制を整備し、柔軟に調整できるようにすることが重要です。

また、候補者自身にも自己成長を促す機会を提供することで、より主体的なキャリア形成と人材の定着が期待できます。

サクセッションプランの策定でよくある課題

企業がサクセッションプランを策定する際、様々な課題に直面するものです。特に多い課題としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 課題① 候補者の選定が主観的になりやすい
  • 課題② 育成の時間とリソースが不足しがち
  • 課題③ 対象者本人の意欲や適性とのギャップ

課題① 候補者の選定が主観的になりやすい

サクセッションプランでは、後継者候補の選定が人事や経営層の主観に左右されやすいという課題があります。

評価基準が明確でない場合、業績や勤務年数といった表面的な要素に偏り、真に適した人材が選ばれないリスクも高まります。また、選ばれなかった従業員のモチベーション低下にもつながるため、客観的な評価基準や多角的な選定プロセスを整備することが求められます。

課題② 育成の時間とリソースが不足しがち

サクセッションプランを実施する際、候補者の育成に十分な時間と人的・金銭的リソースが必要です。しかし、日常業務に追われる中で育成に注力する余裕がなく、形式だけの計画に終始するケースも少なくありません。

特に中小企業では専任の育成担当者を置けないことも多く、計画通りの進捗が難しくなりがちです。継続的なサポート体制や経営層のコミットメントが不可欠です。

課題③ 対象者本人の意欲や適性とのギャップ

後継者候補に選ばれた社員が、必ずしもリーダー職への強い意欲や適性を持っているとは限りません。

プレッシャーや責任の重さを理由に辞退を申し出るケースや、育成しても期待通りの成果が出ないこともあります。このギャップを防ぐためには、事前のキャリア志向の把握や対話が不可欠です。

また、定期的なフィードバックを通じて、本人の成長実感や役割理解を促進する仕組みが重要となります。

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まとめ

本記事では、サクセッションプランの基本的な概念をはじめ、作り方や成功のポイントについて解説しました。

サクセッションプランは、企業の中長期的な競争力を支える要となる取り組みで、計画的な人材育成と透明性の高い選抜は、経営の安定と継続に不可欠です。企業の事例からも、明確な要件定義、客観的な評価、育成支援体制の重要性がうかがえます。

一方で、候補者の選定や育成リソースの確保、本人の意欲とのギャップなどの課題も多く存在します。自社に合った仕組みを整えることが、成功への第一歩となるでしょう。

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この記事を書いた人

AME&Company編集部

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編集部

AME&Company編集部では、人事労務やマネジメントに関するお役立ち情報を発信しています。

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