2025/12/27
人材育成リバースメンタリングとは?メリットや導入事例をわかりやすく解説
企業の競争力強化や組織変革を進める中で、若手社員と管理職の知識や価値観のギャップは無視できない課題です。そんな中、若手が上司や経営層に学びを提供する、リバースメンタリングが注目されています。
本記事では、リバースメンタリングの概要や目的をはじめ、メリット・デメリット、導入手順、注意点について解説しています。リバースメンタリングを導入した企業の事例も紹介していますので、ぜひお役立てください。
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リバースメンタリングとは?
まずは、リバースメンタリングの基本的な考え方や特徴を押さえ、なぜ今必要とされているのかを理解しましょう。
- リバースメンタリングの意味
- リバースメンタリングとメンター制度の違い
- リバースメンタリングが注目される背景
リバースメンタリングの意味
リバースメンタリングとは、年次や役職の若い社員がメンターとなり、上司や管理職といった立場の上の社員に対して知識や視点を共有する人材育成手法です。デジタル技術や最新トレンド、若手世代の価値観などを学ぶ場として活用されます。
リバースメンタリングは単なる知識伝達にとどまらず、世代間の相互理解を深め、組織内のコミュニケーション活性化や意識改革につながる取り組みとして注目されています。
リバースメンタリングとメンター制度の違い
一般的なメンター制度は、経験や知見のある先輩社員が若手社員を支援し、業務遂行力やキャリア形成をサポートする仕組みです。一方、リバースメンタリングは若手がメンターとなり、管理職や経営層が学ぶ立場になります。
目的も異なり、従来型は人材育成や定着支援が中心であるのに対し、リバースメンタリングは価値観のアップデートや組織変革、意思決定の質向上を狙う点が特徴です。上下関係を一時的にフラットにする点も大きな違いといえるでしょう。
リバースメンタリングが注目される背景
リバースメンタリングが注目される背景には、デジタル化の加速や世代間ギャップの拡大があります。SNSやAIなど新しい技術・文化に精通する若手社員と、意思決定を担う管理職層との認識差が課題となる企業は少なくありません。
加えて、多様性や心理的安全性を重視する組織づくりが求められる中、若手の声を経営やマネジメントに反映する仕組みとして有効性が高まっています。トップダウンだけでは変革が進まない時代における新しい人材活用策として期待されています。
リバースメンタリングを導入するメリット・デメリット
リバースメンタリングの導入効果を最大化するためには、良い面だけでなく課題や注意点も正しく把握することが重要です。どのようなメリットやデメリットが考えられるのか、詳しく見ていきましょう。
リバースメンタリングを導入するメリット
上司や経営層のスキルアップにつながる
リバースメンタリングでは、若手社員がメンターとなり、デジタルツールの活用方法や最新の業界トレンド、現場のリアルな課題感を上司や経営層に伝えます。これにより、管理職が自身の経験や過去の成功体験に頼りすぎることなく、時代に即した判断やマネジメントが可能になります。
トップ層の視点がアップデートされることで、組織全体の意思決定スピードや変革力が高まり、企業競争力の強化にもつながるでしょう。
世代間ギャップの解消が進む
年齢や役職が異なる社員同士が対等な立場で対話するリバースメンタリングは、世代間ギャップの解消に効果的です。若手社員が何を重視して働いているのか、どのような価値観を持っているのかを上司が直接理解できるため、コミュニケーションのすれ違いが減少します。
一方で、若手側も上司の考えや責任の重さを知る機会となり、相互理解が深まることで、職場全体の関係性改善が期待できます。
若手社員のエンゲージメントが向上する
自分の知識や意見が上司や経営層に影響を与える経験は、若手社員にとって大きな成長機会です。単なる指示待ちの立場ではなく、組織づくりに関与しているという実感が、仕事への主体性やモチベーションを高めます。
次第に会社への信頼感や帰属意識が強まり、エンゲージメント向上や離職防止といった人事課題の解決にも寄与するでしょう。
リバースメンタリングを導入するデメリット
上下関係への心理的抵抗が生じやすい
リバースメンタリングは立場を逆転させる取り組みであるため、若手・上司双方に心理的抵抗が生じやすい点が課題です。若手は「上司に意見してよいのか」と遠慮しがちになり、上司側も「指導される立場」に戸惑うことがあります。
この抵抗感を放置すると、本音での対話が生まれず、形式的な取り組みに終わる可能性があります。
目的が曖昧だと効果が出にくい
リバースメンタリングは導入すること自体が目的になってしまうと、十分な成果を得られません。何を学ぶのか、どのような変化を期待するのかが明確でない場合、雑談に近い場になりがちです。
導入前にテーマやゴールを設定し、組織課題と結びつけて設計しなければ、投資対効果が見えにくくなる点は注意が必要です。
若手メンター側の負担が増える
若手社員がメンター役を担うことで、通常業務に加えて準備や対話の時間が必要となり、負担が増える場合があります。特に評価制度やサポート体制が整っていないと、「やらされ感」や不満につながりかねません。
メンター役を任せる際は、役割の意義を明確にし、成長機会として正当に評価する仕組みづくりが求められます。
リバースメンタリングを導入した企業の事例
実際にリバースメンタリングを導入した企業では、どのような成果が生まれているのでしょうか。企業の取り組みを通じて、導入のヒントや成功のポイントを見ていきましょう。リバースメンタリングは、思いつきで始めても十分な効果は得られません。目的設定から運用、振り返りまでを段階的に設計することが成功の鍵となります。ここでは、人事担当者や管理職が実務で活用しやすいよう、導入までの基本的な流れをステップ形式で解説します。
- 導入事例1:NEC(日本電気株式会社)
- 導入事例2:住友化学株式会社
- 導入事例3:株式会社資生堂
導入事例1:NEC(日本電気株式会社)
NECでは、新入社員をリバースメンターとして役員や部門長が学ぶ「リバースメンタリング研修」を導入しています。新入社員が進行役となり、経営層とチームを組んでデジタル活用や課題解決をテーマにワークショップ形式でアプリ企画に取り組むプログラムです。
参加者はDXや課題解決への発想を共有し、立場を超えた対話と協働を体験。経営層は若手のデジタル感覚や発想力に触れ、マインドセットや経営判断に新たな視点を取り入れる機会となっているのが特徴的です。
一方、若手は会社全体の課題感や経営層の視点を学ぶことで、エンゲージメントが高まる効果も確認されています。
導入事例2:住友化学株式会社
住友化学株式会社は2020年より試行的にリバースメンタリング制度を導入しています。目的は、若手社員がメンター役として経営層の視野を広げることと、若手側の会社へのロイヤリティやモチベーション向上です。
若手の新しい知識や感性に触れる機会を経営陣が持つことで、経営判断に若い視点を取り入れようとする取り組みが進められています。また、若手社員は経営の考え方を身近に学び、当事者意識と愛社精神が育まれている点が評価されました。
さらに、約3ヵ月でペアを変更する工夫により、マンネリ化を防ぎ多様な視点を経営層に提供しています。
導入事例3:株式会社資生堂
資生堂は2017年からリバースメンタリングを導入し、「役員のITスキル・意識向上」と「社内コミュニケーション活性化」を目的にしています。きっかけは社内提案制度で、IT部門の社員による教育提案が経営層からの要望につながったことです。
制度当初は7人のメンティーが選ばれましたが、役員側のITリテラシーや知識が着実に向上したほか、若手と先輩のコミュニケーションが活性化した好事例とされています。リバースメンタリングを通じて、役員が若手の視点や技術的理解を深めるだけでなく、若手側との双方向の関係性構築にも寄与しました。
リバースメンタリングの導入手順
リバースメンタリングは、思いつきで始めても十分な効果は得られません。目的設定から運用、振り返りまでを段階的に設計することが成功の鍵です。
実務で活用しやすいよう、導入までの基本的な流れをステップ形式で解説します。
- 導入目的を明確にする
- 参加対象者を選定する
- ルールを設計する
- オリエンテーションを行う
- 実施/振り返り/改善を行う
1.導入目的を明確にする
リバースメンタリングを成功させるためには、最初に導入目的を明確にすることが欠かせません。管理職の意識改革やデジタル理解の向上、若手社員の定着促進など、解決したい組織課題を具体化することで、取り組みの方向性が定まります。
期待するゴールを言語化し、関係者間で共有することが、効果的な運用の第一歩です。
2.参加対象者を選定する
次に、メンターとなる若手社員と、メンティーとなる管理職・経営層を選定します。若手メンターは年次の若さだけでなく、主体的に意見を発信できる姿勢や、現場理解の深さが重要です。
一方、メンティー側には学ぶ姿勢が求められます。立場に関係なく対話に向き合える人を選ぶことで、建設的なコミュニケーションが生まれやすくなり、制度の実効性が高まります。
3.ルールを設計する
リバースメンタリングでは、安心して意見交換ができる環境づくりが重要です。そのため、実施頻度や期間、1回あたりの時間、扱うテーマなどの基本ルールを事前に設計しましょう。
また、評価や人事考課に直結しないことを明示し、守秘義務や発言の扱いについても取り決めておくと、心理的安全性が高まります。明確なルールがあることで、参加者は本音で対話しやすくなります。
4.オリエンテーションを行う
実施前には、参加者全員に向けたオリエンテーションを行います。リバースメンタリングの目的や意義、通常の上下関係とは異なる立場で対話する点を丁寧に説明することが重要です。
特に、若手が意見を述べることの価値や、上司が学ぶ姿勢を示す意義を共有することで、心理的な抵抗感を軽減できます。
5.実施/振り返り/改善を行う
リバースメンタリングは実施して終わりではなく、振り返りと改善を繰り返すことが重要です。
定期的に参加者からフィードバックを集め、学びや気づきを可視化しましょう。その結果をもとに、テーマや進め方を見直すことで、より効果的な制度へと進化させることができます。
継続的な改善を前提に運用することで、組織文化として定着しやすくなります。
リバースメンタリングを導入する際の注意点
リバースメンタリングは有効な施策である一方、つまずきやすいポイントも存在します。導入前に注意点を理解しておくことで、制度が形だけで終わることを防げますので、ポイントを見ていきましょう。
- 上下関係を持ち込まない仕組みを作る
- メンターの負担と評価のバランスに配慮する
- 一過性の施策で終わらせない
上下関係を持ち込まない仕組みを作る
リバースメンタリングでは、通常の上下関係をいかに切り離せるかが成功の鍵となります。役職や評価に影響しない場であることを明確にし、発言内容が人事考課に反映されないと事前に共有することが欠かせません。
また、呼称を役職名ではなく名前で統一する、進行役を人事が担うなどの工夫も有効です。形式的に立場を逆転させるだけでは本音は引き出せません。
メンターの負担と評価のバランスに配慮する
若手社員がメンター役を担うリバースメンタリングでは、業務負担と評価のバランスに配慮しなければなりません。準備や対話に時間を要するにもかかわらず、評価や成長機会として位置づけられていない場合、不満や疲弊につながります。
メンター経験を育成施策の一環として明確にし、学びや貢献を評価制度やキャリア形成に反映させることが重要です。
一過性の施策で終わらせない
リバースメンタリングは単発で実施しても、組織変革や意識改革にはつながりにくい施策です。実施後に振り返りの場を設け、得られた気づきや変化を言語化・共有することが不可欠です。
また、内容を人材育成施策やマネジメント改善につなげる仕組みを持つことで、継続的な価値が生まれます。定期的に運用方法を見直しながら改善を重ねることで、組織文化として定着させることができるでしょう。
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まとめ
本記事では、リバースメンタリングの概要や目的をはじめ、メリット・デメリット、導入手順、注意点について解説しました。
リバースメンタリングは、管理職の意識改革や若手社員のエンゲージメント向上など、多くの効果が期待できる施策です。成功には、導入目的の明確化、適切な対象者選定、ルール設計、心理的安全性の確保、継続的な振り返りが欠かせません。
企業の事例から学びつつ、注意点を押さえて運用することで、組織に新たな視点と活力をもたらす制度として定着させることができるでしょう。