2025/09/27
離職対策介護離職を防止する5の対策|介護と仕事の両立支援に取り組む企業事例も紹介

介護離職は、働く世代が直面する深刻な課題です。親や家族の介護が必要になったとき、仕事との両立が難しく離職を選ぶ人は少なくありません。
本記事では、介護離職の防止に有効な対策についてまとめました。介護離職の意味や現状、発生する原因、介護と仕事の両立に取り組む企業の事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
従業員の介護と仕事の両立を支援して、働きやすい職場環境作りを目指しましょう。
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介護離職とは?
「介護のために、やむなく仕事を辞める」という介護離職は誰にでも起こり得る問題です。まずは介護離職の詳しい意味と背景を整理してみましょう。
- 介護離職の意味
- 介護離職の現状
- 育児・介護休業法の改正について
介護離職の意味
介護離職とは、家族や親族の介護を理由に、勤めている会社を退職することを指します。
近年は少子高齢化の進展により、働き盛り世代が親や配偶者の介護を担うケースが増加しています。介護は長期間にわたり心身や経済的な負担が大きいため、仕事との両立が難しくなり、やむを得ず退職を選ぶ人が少なくありません。
企業にとっても優秀な人材を失う深刻な問題であり、個人だけでなく社会全体に影響を及ぼす課題です。
介護離職の現状
近年、毎年約10万人が介護を理由に離職しているとされます。特に40代から50代の働き盛り世代に多く、キャリアの中核を担う人材の離職が企業の生産性低下を招いているのが現状です。
さらに、介護と仕事の両立に苦しみながらも退職を選ばざるを得ない背景には、十分なサポート制度や柔軟な働き方が整っていない現状があります。介護離職は一度発生すると再就職も難しいことから、早期の対策と企業・社会の支援体制の強化が求められています。
育児・介護休業法の改正について
2024年5月に成立した「育児・介護休業法」および「次世代育成支援対策推進法」の改正が、2025年4月1日から段階的に施行されています。この改正の狙いは、働く世代が育児や介護を理由に離職せず、安心してキャリアを継続できるようにすることです。
従業員にとっては利用しやすい環境が整備され、企業にとっても人材確保と定着に直結する重要な制度改正といえます。
介護離職が発生する原因
介護離職は決して一つの理由だけで起こるわけではありません。心身の負担や制度不足など、複雑に絡み合う要因について深堀りしていきましょう。
- 長時間の介護による心身の負担
- 柔軟な働き方や休暇制度の不足
- 支援制度の認知不足と利用しづらさ
- 将来やキャリアへの不安
長時間の介護による心身の負担
介護は一時的な支援にとどまらず、食事や入浴の介助、通院の付き添いなど日常的かつ長期にわたることが多いのが特徴です。そのため、仕事と並行して介護を続けると、睡眠不足や体力の消耗に加え、精神的なストレスも蓄積しやすくなります。
特に同居で介護を担う場合は、24時間気を抜けない状況が続き、心身の健康を害してしまうことも少なくありません。このような長時間介護による負担が、離職という選択につながる大きな要因となっています。
柔軟な働き方や休暇制度の不足
介護と仕事を両立するには、短時間勤務やフレックスタイム、在宅勤務などの柔軟な働き方が不可欠です。しかし、制度が十分に整っていなかったり、実際には利用しづらい雰囲気が職場に残っていたりするケースも少なくありません。
また、介護休業制度は存在していても、期間が限られていたり収入面の不安があったりするため、安心して活用できない従業員も多いのが実情です。このように、柔軟な制度や環境の不足が、やむを得ない介護離職を引き起こす背景になっています。
支援制度の認知不足と利用しづらさ
介護に直面した従業員が、会社や行政の提供する支援制度を十分に知らないまま離職に追い込まれるケースは少なくありません。介護休暇や介護サービスなど制度自体は整っていても、情報が従業員に届いていなかったり、申請手続きが複雑で使いにくかったりする点が大きな課題です。
特に中小企業では相談窓口や専門人材が不十分な場合もあり、利用までのハードルが高くなります。結果として、制度を有効活用できず、両立困難から離職を選ぶ人が出てしまうのです。
将来やキャリアへの不安
介護に直面したとき、多くの従業員が「今の働き方を続けられるだろうか」「キャリアが途切れてしまうのではないか」と強い不安を抱くものです。特に管理職や専門職など責任の重い立場にある人ほど、介護との両立に限界を感じやすく、将来の昇進や職場での評価への影響を懸念します。
また、再就職の難しさや収入減少のリスクも離職を決断する要因の一つです。こうしたキャリア上の不安や将来への見通しの立てにくさが、介護離職を引き起こす大きな背景となっています。
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無料ダウンロード介護離職が企業に与える影響
従業員の介護離職は本人だけでなく、企業にも深刻な影響を及ぼします。具体的にどのような影響を与えるのか、代表的なものを見ていきましょう。
- 人材流出による組織力の低下
- 採用・育成コストの増加
- 職場の生産性や士気への影響
人材流出による組織力の低下
介護離職が発生すると、企業にとっては貴重な人材が流出することを意味します。
特に介護離職が多い40〜50代は、知識や経験が豊富で組織の中核を担う世代です。その人材が退職すれば、業務の継続性や後進育成に大きな支障をきたします。
また、急な離職はチーム全体の負担を増やし、残された従業員に過度の業務集中を招くことにもつながります。
採用や育成にかかるコストの増加
介護離職によって人材が抜けると、その穴を埋めるために新たな採用活動が必要となります。
採用には求人広告費や面接などの労力がかかるだけでなく、採用後も研修やOJTを通じた教育コストが発生します。特に専門スキルや経験が求められる職種では、即戦力となる人材の確保が難しく、採用競争の激化によってコストはさらに増大してしまうでしょう。
また、退職した社員のノウハウや人脈は簡単に引き継げず、企業にとって大きな損失となる点も見逃せません。
職場の生産性や士気への影響
介護離職は、残された社員の働き方や職場環境にも影響を及ぼすのです。
急な離職により人員が不足すると、既存社員の業務負担が増加し、長時間労働やストレスの原因になります。その結果、モチベーションの低下や離職意向の高まりを引き起こし、さらなる人材流出を招く悪循環に陥ることも珍しくありません。
加えて、「介護と仕事の両立が難しい会社」というイメージが広がれば、求職者からの魅力度が下がり、採用活動にも悪影響が出ます。
介護離職を防止する5つの対策と取り組み例
介護離職を防止するには、企業と従業員がともに工夫を重ねることが大切です。どのような対策を講じるのが有効なのか、実践的なアプローチをしっかり抑えておきましょう。
- 柔軟な働き方を可能にする制度の導入
- 介護休業・休暇制度の活用促進
- 社内相談窓口や両立支援担当者の設置
- 介護サービスの情報提供
- 企業文化としての理解と風土づくり
1.柔軟な働き方を可能にする制度の導入
介護と仕事を両立するためには、従業員が状況に応じて働き方を調整できる仕組みが欠かせません。特に通院や急な介助が必要となる場面では、時間や場所に縛られない柔軟性が求められます。
柔軟な働き方の導入は、従業員の介護離職防止だけでなく、生産性向上にも寄与します。
2.介護休業・休暇制度の活用促進
介護休業や介護休暇は法律で定められた権利ですが、制度を知らなかったり収入面の不安で利用できなかったりするケースもあります。企業が積極的に制度利用を後押しすることで、従業員は安心して休業を選択できます。
復職支援を組み合わせることで、介護離職防止に直結するでしょう。
3.社内相談窓口や両立支援担当者の設置
介護に直面した際、どこに相談すればよいのかわからず孤立してしまう従業員も少なくありません。社内に専門窓口や担当者を設置することで、安心して相談できる環境が整います。
早期に課題を共有することで、柔軟な働き方や制度利用につなげられる点が大きなメリットです。
4.介護サービスの情報提供
介護離職の背景には、外部の介護サービスや支援制度を十分に活用できていない実情があります。企業が情報提供のハブとなることで、従業員は地域資源を有効に使えるようになります。
介護保険制度や地域包括支援センターの紹介を行うことで、介護離職のリスク軽減につながるでしょう。
5.企業文化としての理解と風土づくり
制度があっても職場で利用しにくい雰囲気があれば、効果は限定的です。上司や同僚の理解を深め、介護と仕事の両立を前向きに支援する文化づくりが欠かせません。
管理職への研修や事例共有を通じて、従業員が安心して制度を利用できる環境を整備することが求められます。
介護と仕事の両立支援に取り組む企業の事例
先進的に介護と仕事の両立支援へ取り組む企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。具体的な企業事例から学べるヒントを見ていきましょう。
- 事例1:ソニーグループ株式会社
- 事例2:ハウス食品グループ本社株式会社
- 事例3:株式会社はなまる
事例1:ソニーグループ株式会社
ソニーグループ株式会社は、多様性と公平性を重視した人材施策の一環として、介護と仕事の両立支援制度「Symphony Plan」を提供しています。
この支援制度は介護を誰にでも起こり得るライフイベントと捉え、必要なときに社員が安心して働き続けられるように設計された制度です。フレキシブルワークや介護休業の支援金制度に加え、介護福祉士など資格を持つ専門員による個別相談窓口を設置。
さらに、マネジメント向け研修やアンコンシャスバイアス除去研修を行い、管理職が部下の状況を正しく理解し支援できる環境を構築しています。これらの取り組みにより、介護に関する社内理解が浸透し、相談件数も増加しています。
事例2:ハウス食品グループ本社株式会社
ハウス食品グループ本社株式会社は「社員が安心して長く働ける環境づくり」を方針に、介護と仕事の両立支援に積極的に取り組んでいます。
介護休業・介護休暇制度の整備に加え、短時間勤務やテレワークといった柔軟な働き方を推進。さらに、社内外の介護相談窓口を設置し、従業員とその家族が制度利用や介護保険制度について気軽に相談できる体制を整えました。
また、セミナーや情報提供を通じて従業員の理解を深める活動も実施。こうした総合的な取り組みにより、介護を理由とした離職防止と、従業員の生活とキャリアの両立支援を実現しています。
事例3:株式会社はなまる
外食チェーンを展開する株式会社はなまるでは、2009年に発足した「はなまるレディスプロジェクト」を起点に、介護支援の取り組みを拡充してきました。
役員から店舗責任者までを対象とした介護セミナーを実施し、経営層を巻き込んだトップダウンの推進を実現。また、専任担当者を配置して全国の店舗で介護相談窓口を開設し、介護保険の手続きや勤務調整など現場レベルの課題に対応しています。
さらに、従業員同士が気軽に介護について語り合える「ケアバル」や、オンライン動画による情報発信も展開。これにより相談しやすい雰囲気が広がり、従業員の安心感と定着率の向上につながっています。
介護離職の防止を成功させるポイント
介護離職を防止するには、ただ制度を整えるだけでは十分ではありません。介護離職防止を真に成功させるために欠かせないポイントを整理して解説していきますので、参考にしてください。
- 経営層がリーダーシップを持って推進する
- 従業員の実情に即した制度設計を行う
- 情報提供と相談体制を継続的に整備する
- 介護と仕事の両立を支える企業文化を育む
経営層がリーダーシップを持って推進する
介護離職防止を成功させるためには、経営層が強い意思を持って取り組みを推進する姿勢が欠かせません。現場任せでは限界があるため、トップメッセージとして「介護と仕事の両立を支援する」方針を明確に発信することで、従業員の安心感や信頼感につながります。
さらに、管理職への研修や人事施策への反映を通じて、全社的な一体感を形成することが重要です。
従業員の実情に即した制度設計を行う
支援制度が形式的なものにとどまっていては、実際に介護を担う従業員には役立ちません。
介護の状況は家庭ごとに大きく異なるため、従業員の実情やニーズを丁寧にヒアリングし、柔軟な働き方や段階的な勤務調整などを取り入れることが必要です。特に短時間勤務やテレワーク制度の充実は、介護との両立を現実的に支える手段となります。
現場の声を反映した制度設計こそが、利用率向上と離職防止の鍵となります。
情報提供と相談体制を継続的に整備する
従業員が介護離職の課題に直面したとき、頼れる情報や相談窓口があるかどうかは離職防止に直結します。
介護サービスや利用可能な制度についての社内ポータルやセミナーを定期的に提供し、最新情報を得られる環境を整えることが重要です。また、社内相談窓口や専門の担当者を配置することで、従業員が安心して相談できる仕組みを持つことができます。
情報と相談体制を継続的に強化することが、従業員の不安軽減に大きく寄与するでしょう。
介護と仕事の両立を支える企業文化を育む
支援制度や仕組みが整っていても、利用しづらい雰囲気が社内にあれば従業員は介護と仕事の両立を諦めざるを得ません。
周囲の理解や協力を得られる職場風土を醸成することは、離職防止のための大前提です。管理職やチームメンバーが互いの状況に配慮し合う文化をつくり、制度利用をポジティブに受け止められる環境を整える必要があります。
理解と支援が自然に根付いた企業文化は、長期的な人材定着と生産性向上を実現します。
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まとめ
本記事では、介護離職の防止に有効な対策をはじめ、意味や現状、発生する原因、介護と仕事の両立に取り組む企業の事例もまとめました。
介護離職を防ぐためには、柔軟な働き方や休暇制度の整備、相談窓口や情報提供の充実、そして企業文化としての理解と支援が欠かせません。紹介した企業事例のように、トップダウンでの推進や現場に即した制度設計が効果的です。
介護と仕事の両立を支援する取り組みを進めることで、従業員の安心感と定着率の向上、企業の生産性向上につながるでしょう。