2025/08/07
人材育成マミートラックとは?意味や問題の原因、対策をわかりやすく解説

働き手の多様化が進む中、出産や育児を経た女性社員のキャリア継続支援は企業の重要な課題のひとつです。しかし、マミートラックの問題はいまだ根強く存在し、多くの優秀な人材を失うリスクをはらんでいます。
本記事では、マミートラックの意味や概念に加えて、発生する原因と企業が取り組むべき対策についてまとめました。マミートラックを正しく理解し、組織の制度や意識を見直す際の参考にしてください。
マミートラックとは?意味や由来について
まずは、マミートラックの意味や言葉の由来について詳しく見ていきましょう。
マミートラックの意味
マミートラックとは、出産や育児をきっかけに、女性が昇進やキャリアアップの機会を制限された業務や職種に配置される状態のことです。
マミートラックにより、女性は自身のキャリア形成において大きな制約を受け、長期的な職業的成長が阻害される結果となります。日本の職場環境における深刻な課題として認識されており、働く女性の職業継続意欲や企業の人材活用効率に大きな影響を与えています。
マミートラックの言葉の由来
マミートラックという言葉は、1980年代のアメリカで使われ始めました。英語では “Mommy track” と表記され、育児中の女性がメインのキャリアルートから外れ、昇進が見込めない「脇道(トラック)」に置かれることを表しています。
女性の社会進出が進む一方で、家庭との両立を求められる女性が職場で不利な扱いを受ける現実を象徴しています。
マミートラックの問題点
マミートラックは、本人のキャリア形成に深刻な影響を及ぼすだけでなく、企業や社会全体にとっても見過ごせない課題です。マミートラックによって生じる不利益や不平等についても、しっかりと把握しておきましょう。
- キャリアの停滞と昇進機会の喪失
- 本人の意欲やモチベーションの低下
- 職場内での不公平感や分断の助長
- 女性活躍推進との矛盾と企業イメージへの影響
キャリアの停滞と昇進機会の喪失
マミートラックに入ることで、本人の希望や能力に関係なく、責任の少ない業務や昇進の機会が少ない部署に配置されることがあります。その結果、スキルの習得や経験の積み重ねが難しくなり、長期的なキャリア形成に大きな支障をきたしてしまうのです。
特に、同年代の社員が昇進していく中、自身だけが取り残される状況は、将来の展望を描きにくくする要因となります。個人だけでなく、企業全体の人材活用の面でも損失となる可能性があるため注意が必要です。
本人の意欲やモチベーションの低下
育児と仕事の両立に努力しているにもかかわらず、キャリアの選択肢が制限される状況は、当事者のやる気や職場への信頼を損なう要因となります。「どうせ期待されていない」「努力しても評価されなくて悔しい」といった感情が生まれ、モチベーションの低下や離職のリスクも高まってしまうでしょう。
本人の成長機会を奪うだけでなく、企業にとっても貴重な人材の損失につながる深刻な問題です。
職場内での不公平感や分断の助長
マミートラックが存在する職場では、育児中の社員とそうでない社員との間に、業務の重みや期待値の差が生じることがあります。職場内で「育児している人は楽をしていて羨ましい」「負担が偏っている」といった不満や誤解が生まれ、不公平感や人間関係の分断を引き起こすことも珍しくありません。
このような環境はチームワークや生産性の低下にもつながり、組織の健全な運営に悪影響を及ぼします。
女性活躍推進との矛盾と企業イメージへの影響
多くの企業が「女性活躍推進」を掲げる一方で、実態としてマミートラックの存在を放置している場合、そのメッセージとの矛盾が表面化します。社内外から「形だけの取り組み」と見なされることで、企業の信頼やブランドイメージが損なわれる可能性もあるでしょう。
また、就職・転職希望者に対してもネガティブな印象を与え、優秀な人材の確保に悪影響を及ぼすことも懸念されます。
マミートラックが発生する原因
マミートラックが起こってしまう背景には、制度面の課題や職場文化、社会的な価値観など複数の要因が関係しています。適切な対策を講じるためにも、代表的な原因について見ていきましょう。
- 柔軟な働き方制度の整備不足
- 出産や育児に対する固定観念
- 管理職や上司の理解不足
柔軟な働き方制度の整備不足
マミートラックが発生する大きな要因のひとつが、柔軟な働き方を支える制度の不備です。
時短勤務や在宅勤務といった制度が導入されていても、実際には利用しづらい雰囲気が職場に残っているケースもあります。制度自体が整っていない企業では、出産後の女性社員が仕事との両立を諦め、キャリアの選択肢を狭めてしまうこととなるのです。
柔軟な働き方が選べない職場環境では、本人の能力や意欲に関わらず「責任のある仕事は難しい」と判断され、結果的にキャリア停滞を招いてしまうでしょう。
出産や育児に対する固定観念
「出産をしたら仕事より家庭を優先するべき」「母親は子育てに専念するもの」といった固定観念が、マミートラックの背景に深く根付いています。こうしたジェンダーに基づく思い込みは、職場内の評価や人材配置にも影響を及ぼし、出産や育児を経験した女性が重要な仕事から外される原因となります。
また、本人が無意識に「もうキャリアは望めない」と感じてしまうケースも少なくありません。固定観念が職場文化として存在する限り、意欲ある人材が本来の力を発揮できず、企業にとっても大きな損失となります。
管理職や上司の理解不足
管理職や上司の理解不足も、マミートラックを引き起こす原因になりかねません。
特に、子育て中の社員に対して、配慮のつもりで軽い業務ばかりを割り当ててしまうと、成長機会を奪う結果になります。また、本人の意欲やスキルに目を向けず、勤務時間の制限だけを理由に昇進のチャンスを与えないケースもあります。
上司が家庭と仕事の両立を支援する姿勢を持ち、適切なコミュニケーションをとることが不可欠です。理解と配慮のバランスをとることが、マミートラックの回避に繋がるでしょう。
マミートラックが企業に与える影響
マミートラックは、働く女性個人のキャリアに影響を与えるだけでなく、企業にとっても大きな課題となります。見えにくい問題ではありますが、放置することで組織の成長や職場環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
マミートラックが企業にもたらす、代表的な影響としては以下が考えられるでしょう。
優秀な人材の流出リスク | 成長意欲のある社員が活躍できず、離職を招いてしまう |
---|---|
生産性・士気の低下 | 不公平感が広がり、チーム全体のモチベーションが低下する |
ダイバーシティ推進の妨げ | ジェンダー平等が進まず、企業イメージや信頼に影響する |
マミートラックを脱出したい!企業ができる対策例
マミートラックの解消には、企業側の制度改革と意識改革が欠かせません。社員が安心してキャリアを継続できるようにするためには、どのような取り組みが有効なのか、具体的な対策について解説します。
- フレキシブルな働き方の推進
- 人事評価制度の見直し
- キャリア継続を支援する制度作り
- 管理職への意識改革
- ロールモデルとなる女性リーダーの登用
フレキシブルな働き方の推進
マミートラックの回避には、働き方の柔軟性を高めることが欠かせません。時間や場所に縛られずに働ける環境を整えることで、育児や家庭と両立しながらも意欲的に働ける土台ができます。
制度があっても活用しづらい雰囲気があると意味がないため、利用促進に向けた社内文化の見直しも重要です。多様な働き方を認める姿勢が、企業の魅力向上にもつながるでしょう。
人事評価制度の見直し
従来の評価制度が「長時間働ける人」が前提となっている企業は多く、育児中の社員が不利になりがちです。公平な評価を実現するには、勤務時間よりも成果や貢献度を重視した仕組みが求められるでしょう。
また、上司の主観に左右されないよう評価基準の明確化も欠かせません。多様な働き方が正当に評価される環境づくりが、マミートラックの是正につながります。
キャリア継続を支援する制度作り
育休後のスムーズな職場復帰や、キャリアの再スタートを支援する制度が整っていないと、マミートラックに陥りやすくなります。
復職支援プログラムや研修制度を設けることで、ブランクを不安に感じることなく復帰できる環境を整えられます。会社として「続けることを支援する」姿勢を明確にすることが、長期的な人材活用につながるでしょう。
管理職への意識改革
マミートラックを生まないためには、現場でマネジメントを担う管理職の理解と対応が鍵を握ります。配慮のつもりが、キャリアを狭める結果になっていないかを見直すことも欠かせません。
無意識の偏見や固定観念を取り除くための研修を行い、個人の状況に応じた適切な支援ができる力を養うことが重要です。
ロールモデルとなる女性リーダーの登用
育児と仕事を両立しながら活躍する女性の姿が職場にあると、後に続く人のキャリアイメージ形成に役立ちます。ロールモデルの存在は「自分も目指せる」という希望を与え、社内全体の意識にも良い影響を与えるでしょう。
ポジションに限らず、様々な働き方で成果を出している女性の声を発信することも効果的です。
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まとめ
本記事では、マミートラックの意味や概念に加えて、発生する原因と企業が取り組むべき対策についてまとめました。
マミートラックは、制度の不備や固定観念、職場の無理解など複数の要因が絡み合って生じる複雑な課題です。しかし、働く母親が能力を発揮し、キャリアを継続できる環境づくりは、企業にとっても生産性や多様性の向上につながります。
まずは現状を正しく理解し、評価制度や働き方、管理職の意識などを見直すことが第一歩です。企業と社員がともに歩む姿勢が、マミートラックからの脱却を実現します。