2024/12/25
離職対策社員の定着率を上げるには?向上施策や平均、成功事例も解説
現代において、社員が会社に長く留まりたいと感じる職場を作ることは簡単ではありません。様々な施策を講じているものの、社員の定着率に課題を感じている方は少なくないでしょう。
本記事では、社員の定着率向上のための施策について解説しています。定着率を上げるメリットや向上しない原因、改善に取り組む企業の施策事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
今まで人材定着に課題を感じていた方も、社員に長く活躍してもらえる職場環境を築き上げましょう。
社員の定着率とは?
まずは定着率がどのような指標であるのか、以下の3項目から深堀りしていきましょう。
- 定着率=入社後に一定期間働き続けた従業員の割合
- 社員の定着率の計算方法
- 社員の定着率の平均
定着率=入社後に一定期間働き続けた従業員の割合
定着率とは、入社後に一定期間働き続けた従業員の割合です。定着率は、企業の労働環境や従業員満足度を測る重要な基準として活用されます。
定着率が高い場合は、職場環境や企業文化が従業員にとって魅力的であると考えられます。一方、定着率が低い場合は、職場の課題や離職原因の特定と改善が必要です。
特に新入社員の定着率は、育成やサポート体制の評価に直結するため、企業の長期的な成長に大きく影響します。企業は定着率をモニタリングすることで、採用後のオンボーディングプロセスや教育・研修制度の改善点を把握し、従業員の離職を未然に防ぐ取り組みが可能になります。
社員の定着率の計算方法
社員の定着率を計算する際、一般的に以下のような式が用いられます。
定着率(%) = (入社人数 - 離職者数) ÷ 入社人数 × 100
年間の定着率を計算する場合、年初に在籍していた従業員数から、その年末まで在籍している人数を割り出します。例えば、4月1日に50人入社して、残っている従業員が40人の場合は定着率80%となります。
(50 - 10) ÷ 50 × 100 = 80%
また、新入社員に限定して計算する『新入社員定着率』、部署ごとの定着率を算出することで、より具体的な課題や改善策を検討することが可能です。
定着率の平均
厚生労働省が発表した『令和5年雇用動向調査結果の概況』によると、平均離職率は15.4%です。離職率と定着率を合計すると100%になるため、令和5年の平均定着率は84.6%であることがわかります。
ただし、社員の定着率の平均は業界や職種、企業の規模などによって大きく変動するため注意が必要です。
離職率計算エクセルテンプレート
従業員人数、離職者数などを入力することで年間の離職率を簡易に計算することができます。
無料ダウンロード社員の定着率が向上するメリット
社員の定着率が向上することは、企業にとって様々なメリットをもたらします。特に大きなメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 生産性と業務効率の向上
- 優秀な人材の流出を防止
- 採用や教育のコストを削減
生産性と業務効率の向上
定着率が向上すると、社員が長期間にわたって社内でスキルを磨き、専門知識を深めることが可能になります。
また、職場での人間関係が安定し、チーム間のコミュニケーションがスムーズになることで、プロジェクトの進行や業務がより円滑に進むようになるでしょう。さらに、頻繁な離職が発生しないことで、既存社員の負担が軽減され、集中して業務に取り組む環境が整います。
優秀な人材の流出を防止
社員の定着率を高めることで、優秀な人材の流出を防ぐことが可能です。
特に、スキルや経験を積んだ社員が離職する場合、企業は知識やノウハウの蓄積を失い、大きなダメージを受けます。一方で、働き続けたいと思える環境を整備することで、社員が長期間にわたって企業に貢献する意欲を持ち続けられます。
また、従業員が安心して働ける環境が評判となれば、優秀な人材の採用競争でも有利になる効果が期待できるでしょう。
採用や教育のコストを削減
定着率の向上によって、採用や教育にかかるコストを大幅に削減することができます。
新たな社員を採用するには、求人広告費や採用プロセスにかかる時間が必要です。また、新入社員のオンボーディングや研修に伴う経費も発生します。
しかし、社員の定着率が高い企業では、これらのコストを最小限に抑えることが可能です。さらに、経験豊富な社員が継続的に働くことで、教育やサポートの負担も軽減されます。
社員の定着率が向上しない原因
社員の定着率を向上する施策を講じても、なかなか思ったような成果が得られない場合があります。なぜ定着率が向上しないのか、よくある原因について詳しく見ていきましょう。
- 長時間労働や過度な業務負荷
- 給与や待遇への不満
- 社内の人間関係が悪い
- キャリアパスへの不安
長時間労働や過度な業務負荷
社員の定着率が向上しないよくある原因の一つは、長時間労働や過度な業務負荷です。
長時間労働や過度な業務負荷が常態化すると、社員の心身に大きな負担を与えて離職の要因となります。特に、過重労働が続くとワークライフバランスが崩れ、社員が働き続ける意欲を失いやすくなります。
また、休暇の取得が難しい環境やサポート体制の不足も、労働意欲の低下につながります。こうした状況が放置されると、離職率の増加だけでなく、企業の評判や採用活動にも悪影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。
給与や待遇への不満
給与や待遇が社員の期待を下回る場合、定着率の低下につながることが多いため要注意です。
同業他社と比較して報酬が低い場合や昇給が期待できない状況では、社員が他社への転職を検討する可能性が高まります。また、福利厚生の充実度や職場環境に対する不満も、定着率が向上しない原因として挙げられるでしょう。
社員は、自分の努力が正当に評価されていると感じることで、働き続けるモチベーションを維持できます。
社内の人間関係が悪い
社内の人間関係が悪化している職場は、社員の離職率が高くなる傾向があります。
特に、上司や同僚とのトラブルが頻発したり、ハラスメントが存在したりする場合、社員が精神的に追い詰められる可能性があります。また、チーム内でのコミュニケーションが不足している場合、孤立感を抱えやすくなるものです。
人間関係のトラブルは職場全体の雰囲気を悪化させるだけでなく、社員の仕事への意欲を大きく削ぐ原因となります。
キャリアパスへの不安
キャリアパスが明確でない職場では、社員が将来に不安を感じやすくなります。
昇進やスキルアップの機会が限られていると、成長できる職場を求めて転職を検討するケースは珍しくありません。また、キャリア相談や目標設定のサポートが不足していると、従業員が自分の可能性を見出しにくくなります。
社員の定着率向上に向けた5つの施策
社員の定着率を上げるには、組織課題に合わせた施策や取り組みを講じることが重要です。しかし、具体的にどのような施策が有効なのかわからずお困りの方も多いでしょう。
社員の定着率向上に向けた代表的な施策をご紹介しますので、自社で取り組みを行う際の参考にしてください。
- 働きやすい職場環境の整備
- 公平で透明性のある評価制度の導入
- キャリアアップを支援する教育研修プログラムの提供
- 従業員の声を反映するフィードバック体制の構築
- 柔軟な働き方の導入とワークライフバランスの推進
働きやすい職場環境の整備
社員の定着率を向上させるためには、働きやすい職場環境を整備することが重要です。
具体的には、職場の風通しを良くするための社内コミュニケーションの促進や、ハラスメント対策の徹底などが挙げられます。また、適切な設備の導入や快適なオフィスレイアウトの構築、清潔で安全な労働環境の維持も欠かせません。
社員が安心して働ける環境を提供することで、職場への信頼感が高まり、長期的な定着が期待できます。さらに、健康経営への取り組みや、ストレスケアの導入も効果的です。
公平で透明性のある評価制度の導入
公平で透明性のある評価制度の導入は、社員のモチベーションと定着率向上につながります。
社員は自身の努力や成果が正当に評価されることで、働き続ける意欲を持ち続けます。そのためには、評価基準を明確にし、全員が理解できる形で共有することが重要です。
また、定期的な面談やフィードバックを行い、社員が自分の課題や達成すべき目標を把握できる環境を整えることも効果的です。
キャリアアップを支援する教育研修プログラムの提供
キャリアや成長を促す施策は、社員の定着率向上に欠かせない施策の一つです。
キャリアアップを支援する教育研修プログラムを整備することで、社員が自身の成長を実感できる環境を提供することで、定着率を向上させる効果が期待できます。例えば、階層別研修や職種に特化したスキルトレーニング、リーダーシップ研修などが望ましいでしょう。
また、資格取得を支援する制度を導入することで、社員の成長意欲を引き出すことができます。個々のキャリア目標に応じた柔軟なプログラムを提供することで、企業への定着意欲が高まります。
従業員の声を反映するフィードバック体制の構築
社員の声を定期的に収集し、経営や現場に反映する仕組みを整えることで、働きやすさと満足度を向上させることができます。
例えば、従業員サーベイや定期的な1on1ミーティングを実施することで、現場の意見やニーズを把握します。得られたフィードバックを基に、働き方や業務内容の改善を行うことが重要です。
社員が自分の意見が尊重されていると感じることで、会社への信頼感が高まり、離職を防ぐ効果が期待できます。
柔軟な働き方の導入とワークライフバランスの推進
近年、多様な働き方を認めることが企業の競争力を高める要因となっています。
リモートワークやフレックスタイム制の導入により、社員の柔軟な働き方をサポートすることで、仕事と私生活のバランスが取りやすくなるでしょう。特に、育児や介護など個別の事情を抱える社員にとって、柔軟な働き方は働き続ける大きな理由になります。
また、長時間労働の削減や有給休暇取得の推進も、ワークライフバランスを整えるために重要です。社員が心身ともに健康な状態で働ける環境を提供することで、定着率の向上が期待できます。
社員の定着率向上に取り組む企業の施策事例
社員の定着率を向上させる施策を講じる際は、他社の取り組みを参考にすることも大切です。他社がどのようにして社員の定着率を上げる施策を講じているのか、3つの事例を見ていきましょう。
- 株式会社アイネット
- 株式会社アピイ
- 株式会社神戸ポートピアホテル
株式会社アイネット
株式会社アイネットは、横浜市でIT事業を営む企業です。採用強化を進めていく中で、確保した人材により長く活躍してもらうため、以下のような施策を講じました。
導入後は若手社員の定着率が向上し、入社3年以内の離職は3~4人程度に。メンタルヘルスが要因の休職も大幅に減少し、時間外労働についても約16.4時間(前年度は18時間)に改善することに成功しました。
株式会社アピイ
株式会社アピイは、住宅型有料老人ホーム運営や訪問介護を提供している企業です。
社員の身体的負担が大きい介護の現場では長期勤続への不安が常にあり、それらが採用難や定着率低下の課題であると考えていました。そこで、「従業員がいくつになっても働くことができる職場を作る」を目標に以下の施策を講じました。
社長の「いつでも相談に乗る」姿勢で社員のやる気に寄り添い、それぞれが望む働き方を実現できる環境が定着率の向上につながっています。
株式会社神戸ポートピアホテル
株式会社神戸ポートピアホテルはホテル業やレストラン、宴会場などの運営を展開する企業です。
新卒採用におけるほとんどが女性で、結婚・出産後の女性社員の定着に課題を抱えていました。業務上、時間や曜日が不規則になりがちであったため、結婚や出産を機に退職する社員が多くなっていたため、以下のような施策を講じることに。
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まとめ
本記事では、社員の定着率向上のための施策やメリット、向上しない原因、改善に取り組む企業の施策事例について解説しました。
社員の定着率を向上させるには、働きやすい職場環境の整備や公平な評価制度の導入、キャリアアップを支援する教育プログラムなど、企業が積極的に取り組むべきポイントが多岐にわたります。また、給与や待遇、職場の人間関係、キャリアパスの明確化といった要素に注意を払うことで、従業員の離職リスクを減らすことが可能です。
定着率を向上させることは、生産性や企業の信頼性向上にも直結します。本記事を参考に自社の課題を見直し、改善策を実践することで、社員が安心して働ける環境を整える一歩を踏み出しましょう。