2025/02/03
人材育成人的資本経営の成功事例10選!取り組みのポイントや課題も解説
近年、企業経営において『人的資本経営』の重要性が高まっています。しかし、「具体的な取り組みがわからない…」「課題に対して有効なアプローチが思い浮かばない…」と悩む方は少なくありません。
本記事では、人的資本経営を推進した企業の成功事例をまとめました。人的資本経営を実現させるポイントや課題、取り組むメリットについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
人的資本経営とは?
人的資本経営とは、企業が”人”を単なるコストではなく資本として捉え、戦略的に投資・活用する経営手法です。従業員のスキル向上やエンゲージメントの強化、働きやすい環境の整備などを通じて、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
従来の経営では、財務資本や設備投資が重視されてきましたが、近年では人的資本の育成が競争優位性の源泉となると認識されるようになりました。人的資本経営を実践することで、企業は持続的成長を実現し、社会的な価値創出にも貢献できるでしょう。
人的資本経営が注目される背景
人的資本経営が注目される背景には、労働市場の変化や企業の社会的責任の拡大があります。
特に、少子高齢化に伴う人材不足や、働き方の多様化に対応する必要性が高まっています。また、デジタル技術の進化により、従業員のスキルの陳腐化が進む中で、継続的な学習・成長支援が求められているのです。
さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大により、企業は財務情報だけでなく、人的資本を含む非財務情報の開示を求められるようになりました。投資家や消費者の信頼を得るためにも、人的資本経営の実践が不可欠となっています。
人的資本情報の開示状況
近年、企業の人的資本情報の開示が進んでおり、特に大企業を中心に従業員の育成方針やダイバーシティ推進の取り組みを公表する動きが活発化しています。
日本では2023年から上場企業に対し、人的資本に関する情報開示が義務化され、企業は具体的なデータを開示することが求められるようになりました。開示項目には従業員の研修・スキルアップへの投資額や離職率、女性管理職比率などが含まれます。
一方で、開示内容の標準化が進んでいないため、企業ごとに情報の粒度や指標が異なり、比較が難しいという課題もあります。
離職率計算エクセルテンプレート
従業員人数、離職者数などを入力することで年間の離職率を簡易に計算することができます。
無料ダウンロード人的資本経営に欠かせない3P・5Fモデルとは?
3P・5Fモデルとは、人材版伊藤レポート『人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書』で定められた指標です。人的資本経営の実現に向けた取り組みや分析を進めるうえで欠かせな要素ですので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
人的資本経営の3Pについて
人的資本経営の3Pとは、企業が人材戦略を3つの視点(Perspectives)から評価するフレームワークです。
- 経営戦略と人材戦略の連動
- As is-To beギャップの定量把握
- 企業文化への定着
上記の3つの視点について詳しく見ていきましょう。
1.経営戦略と人材戦略の連動
人的資本経営において、経営戦略と人材戦略を一体化させることが重要です。企業の成長目標や市場競争力を高めるためには、それを支える適切な人材配置や育成が不可欠でしょう。
例えば新規事業の展開には、必要なスキルを持つ人材の確保や育成計画が求められます。経営戦略を実現するための人材戦略を策定し、それに基づいた採用・研修・評価制度を整備することで、組織全体の競争力を高めることができます。
2.As is-To beギャップの定量把握
人的資本経営の実践には、現在の組織の状態(As is)と、目指すべき理想の姿(To be)のギャップを定量的に把握することが必要です。
従業員のスキルやエンゲージメント、組織の生産性などをデータで可視化し、課題を明確にします。これにより、どの領域に投資すべきかが明確になり、効果的な人材育成や配置が可能になります。
適切な指標を設定し、定期的にモニタリングすることで、持続的な成長を支える仕組みの構築に繋がるしょう。
3.企業文化への定着
人的資本経営を成功させるには、企業の理念や価値観を従業員に浸透させ、組織文化として定着させることが不可欠です。
企業文化が明確であれば、従業員は共通の価値観のもとで行動でき、組織全体の一体感が生まれます。そのためには、リーダーシップの発揮や、社内コミュニケーションの強化が必要です。
具体的には、企業理念を反映した評価制度や表彰制度を設けることで、従業員の行動を望ましい方向へと導くことができます。
人的資本経営の5Fについて
人的資本経営の5Fとは、人材戦略で重要な共通要素(Factors)を示すフレームワークです。
- 動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキル・学び直し
- 従業員エンゲージメントの向上
- 時間や場所にとらわれない働き方の推奨
上記5つの要素について解説しますので、人的資本経営の実現に向けて参考にしてください。
1.動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
人的資本経営では、事業環境の変化に対応できる動的な人材ポートフォリオの策定と運用が求められます。これには、企業の成長戦略に基づいた適切な人材配置やスキル開発が不可欠です。
市場の変化や技術革新に応じて、必要な人材像を見直し、内部育成と外部採用を柔軟に組み合わせることが重要です。定期的な人材データの分析を行い、組織全体の最適化を図ることで、企業の競争力を維持・強化できます。
2.知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、人的資本経営の重要な要素の一つです。
性別や年齢、国籍だけでなく、異なる経験や価値観を持つ人材を活用することで、イノベーションを生み出しやすくなります。多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整えるためには、公正な評価制度や働きやすい職場づくりが不可欠です。
D&Iを推進することで、企業の持続的成長と社会的な信頼向上にもつながります。
3.リスキル・学び直し
技術革新が加速する現代において、従業員のリスキル(新たなスキル習得)や学び直し(リカレント教育)が重要視されています。
特に、デジタルスキルやデータ分析能力の習得は、多くの業界で不可欠となっています。企業は研修制度やオンライン学習の機会を提供し、従業員が自発的にスキルを向上できる環境を整えることが求められるでしょう。
継続的な学習文化を醸成することで、企業の競争力強化と従業員のキャリア成長を両立できます。
4.従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントの向上は、企業の生産性や離職率に大きな影響を与えるものです。エンゲージメントが高い従業員は企業のビジョンに共感し、主体的に行動する傾向があります。
従業員エンゲージメントを向上させるには、コミュニケーション強化やキャリア成長を支援する制度が重要です。また、働きがいのある職場環境を整備することで、従業員のモチベーション向上にもつながります。
5.時間や場所にとらわれない働き方の推奨
テレワークやフレックスタイム制度の導入により、時間や場所にとらわれない働き方が注目されています。
柔軟な働き方を推奨することで、ワークライフバランスの向上や生産性の向上が期待できるでしょう。特に、育児や介護と仕事を両立しやすい環境を整えることで、多様な人材の活躍を支援できます。
なぜ重要?人的資本経営の実現で得られるメリット
人的資本経営を実現することで、企業は数多くのメリットを得ることができます。代表的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 定着率や従業員エンゲージメントが向上する
- 従業員のスキルアップに伴って生産性が向上する
- 企業価値が向上する
定着率や従業員エンゲージメントが向上する
人的資本経営を実践することで、従業員の定着率やエンゲージメントが向上します。
従業員が企業のビジョンに共感し、自身の成長を実感できる環境が整えば、企業への貢献意欲が高まります。特に、適切なキャリア支援やスキル開発の機会を提供することで、従業員は自らの将来像を描きやすくなるでしょう。
また、評価制度の透明性を高め、公正な待遇を確保することも重要です。従業員のモチベーション向上とともに、企業全体の安定性が高まります。
従業員のスキルアップに伴って生産性が向上する
人的資本経営の一環として、従業員のスキルアップを支援することは、組織全体の生産性向上に直結するものです。
業務に必要なスキルの習得機会を提供することで、従業員はより高度な業務を効率的に遂行できるようになります。特に、デジタル技術の活用や業務プロセスの最適化を学ぶことで、業務効率が飛躍的に向上するでしょう。
また、学習機会を通じて従業員が新たなアイデアや視点を得ることで、組織全体のイノベーション促進にもつながります。
企業価値が向上する
人的資本経営の取り組みは、企業のブランド価値や市場評価の向上にも貢献します。
特に、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目される中で、人的資本の充実度は投資家や株主にとって重要な評価基準の一つです。従業員の成長を支援し、働きやすい環境を整備することで、企業の社会的責任(CSR)を果たすと同時に、外部からの信頼も獲得できます。
さらに、優秀な人材の採用にも好影響を与え、持続的な企業成長につながるため、長期的な企業価値の向上が期待できるでしょう。
人的資本経営に取り組む企業の成功事例
人的資本経営を推進する際、他社の事例を参考にして自社の取り組みを考えるのも有効です。他社がどのようなアプローチで人的資本経営を推進しているのか、取り組みの具体例を見ていきましょう。
参考:経済産業省『人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 実践事例集』
人的資本経営の事例1:ロート製薬株式会社
人的資本経営の事例2:伊藤忠商事株式会社
人的資本経営の事例3:株式会社丸井グループ
人的資本経営の事例4:オムロン株式会社
人的資本経営の事例5:東京海上ホールディングス株式会社
人的資本経営の事例6:三菱ケミカル株式会社
人的資本経営の事例7:ソニーグループ株式会社
人的資本経営の事例8:SOMPOホールディングス株式会社
人的資本経営の事例9:花王株式会社
人的資本経営の事例10:双日株式会社
人的資本経営を実現するポイントと課題
先にご紹介した事例から、人的資本経営を実現するポイントとよくある課題を深堀りしていきましょう。
- データを活用した人的資本の可視化と戦略的活用
- 人的資本経営の成功に必要なリーダーシップの確立
- 企業文化への浸透と従業員の意識改革
- 多様性の確保とインクルージョンの推進
データを活用した人的資本の可視化と戦略的活用
人的資本経営において、データを活用することは欠かせません。
従業員のスキルやパフォーマンス、エンゲージメントなどの情報を収集し、分析することで、社員・組織の強みと課題を把握できます。これらのデータを基に、個々のキャリアパスや成長戦略を立てることが可能になります。
さらに、全体の人材戦略にも役立ち、企業の目標に向けた最適な人員配置や育成プランを策定できるでしょう。データを活用することで、人的資本の最適化が進み、経営の効率化にもつながります。
人的資本経営の成功に必要なリーダーシップの確立
人的資本経営の成功には、強いリーダーシップが不可欠です。
経営者や管理職が社員一人ひとりをどう活かすか、どう成長させるかをしっかりと考え示すことが重要です。リーダーは明確なビジョンと目標を掲げ、部下に対してその意義をしっかり伝える役割を担います。
また、社員の意欲を引き出すためには、信頼関係の構築とフィードバックも欠かせません。リーダーシップがしっかりと確立されていれば、企業全体の人的資本の価値を最大限に引き出すことができます。
企業文化への浸透と従業員の意識改革
人的資本経営を実現するためには、企業文化への浸透と従業員の意識改革が必須です。
従業員が共通の価値観や目標を持ち、日々の業務に生かせるような企業文化を形成することが大切です。そのためには、経営層のトップダウンだけでなく、現場での意識向上を図ることが求められます。
例えば、チームビルディングや社内研修、リーダーシッププログラムを通じて、企業文化を日常的に強化していくことが効果的です。意識改革が進むことで、社員のエンゲージメントも向上し、人的資本がより強固なものとなります。
多様性の確保とインクルージョンの推進
人的資本経営の中で、ダイバーシティ&インクルージョンの推進は重要な要素です。
異なるバックグラウンドや視点を持つ人々が集まることで、組織の柔軟性や創造性が高まります。多様性を重視する企業はイノベーションを促進し、市場の変化にも迅速に対応できるでしょう。
しかし、多様性を生かすためには、全ての社員が自分の意見を自由に表現できる環境作りが不可欠です。インクルージョンを進めることで、社員一人ひとりが尊重され、仕事に対する意欲や帰属意識が高まります。
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まとめ
本記事では、人的資本経営を推進した企業の成功事例や実現させるポイント、取り組むメリットについても解説しました。
人的資本経営は、今後ますます企業の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。データの活用やリーダーシップ、企業文化の改革など、多岐にわたる取り組みが求められますが、これらを実践することで、従業員のエンゲージメント向上やパフォーマンスの最大化が実現できます。
また、ダイバーシティの推進をはじめとする多様な人材の活用も、企業のイノベーションを加速させる要因となります。人的資本を戦略的に活用することで、企業は持続的な成長を目指し、今後の市場でも確固たる地位を築くことができるでしょう。