2025/02/26
離職対策ホテル・宿泊業界の平均離職率は?高い原因や改善に向けた対策、事例も解説

人材確保が難しくなっている近年、従業員の離職率改善がホテル・宿泊業界全体の課題となりつつあります。どのようにして離職防止に取り組むべきか、原因や具体的な施策がわからずお困りの方も多いでしょう。
本記事では、ホテル・宿泊業界の平均離職率や改善に向けた対策例について解説しています。離職率が高い原因、改善に成功したホテルや旅館の取り組み事例もまとめていますので、ぜひお役立てください。
ホテル・宿泊業界の離職率は高い?
ホテルや旅館といった宿泊業界は「離職率が高い」というイメージを持っている方は多いと思います。まずは、実際にホテル・宿泊業界の離職率は高いのか、詳しく見ていきましょう。
ホテル・宿泊業界の平均離職率は26.6%
厚生労働省の『令和5年雇用動向調査結果の概況』では、宿泊業・飲食サービス業の平均離職率は26.6%です。その他の業界と比較しても、宿泊業・飲食サービス業の離職率は高い傾向にあります。
産業 | 離職率(令和5年) |
---|---|
鉱業,採石業,砂利採取業 | 9.2% |
建設業 | 10.1% |
製造業 | 9.7% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 10.4% |
情報通信業 | 12.8% |
運輸業,郵便業 | 10.3% |
卸売業,小売業 | 14.1% |
金融業,保険業 | 10.5% |
不動産業,物品賃貸業 | 16.3% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 11.5% |
宿泊業,飲食サービス業 | 26.6% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 28.1% |
教育,学習支援業 | 14.8% |
医療,福祉 | 14.6% |
複合サービス事業 | 7.8% |
サービス業(他に分類されないもの) | 23.1% |
さらに、同じく厚生労働省が発表した『新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)』によると、宿泊業・飲食サービス業の高卒の離職率は65.1%、大卒は56.6%という結果が出ています。これらのことから、ホテル・宿泊業界の離職率は高いといえるでしょう。
離職率計算エクセルテンプレート

従業員人数、離職者数などを入力することで年間の離職率を簡易に計算することができます。
無料ダウンロードホテル・宿泊業界の離職率が高い原因
ホテル・宿泊業界は他の業界と比較しても離職率が高い傾向にありますが、その原因としてはどのようなものが考えられるのでしょうか。特に多い要因として考えられるものについて、詳しく解説していきます。
- 長時間労働と不規則な勤務シフト
- 低賃金と昇給の遅さ
- 精神的・肉体的な負担の大きさ
- キャリアパスの不透明さ
- 人手不足による業務の負担増
長時間労働と不規則な勤務シフト
ホテル・宿泊業界では、24時間体制での業務が求められるため、シフト制が基本となります。特にフロント業務や清掃業務では、深夜勤務や早朝勤務が発生し、生活リズムが乱れやすくなります。
さらに、繁忙期には残業が増えて休日の取得が難しくなることも少なくありません。このような状況が続くと、心身の疲労が蓄積し、ワークライフバランスが崩れて離職につながるケースが多いです。
低賃金と昇給の遅さ
ホテル・宿泊業界の平均給与は他の業種と比較すると、低めであることが多い傾向にあります。特に、新入社員や若手スタッフの給与水準は課題となりやすいです。
また、昇給のペースが遅く、長年勤務しても給与が大きく上がらないケースが多いため、将来への不安を感じやすくなります。特に労働時間の長さや業務の負担と比較すると、給与が見合っていないと感じる従業員も多く、より待遇の良い他業種へ転職するケースが後を絶ちません。
精神的・肉体的な負担の大きさ
ホテル・宿泊業界では、接客を中心とした業務が多く、常に高いサービス品質が求められます。クレーム対応や急なトラブル処理など、精神的なストレスがかかる場面も多く、プレッシャーを感じやすい職場環境になりがちです。
また、清掃業務や調理業務では、長時間の立ち仕事や重労働が発生し、肉体的な負担も大きくなります。これらの負担が積み重なることで、疲労やストレスが蓄積し、最終的に退職を選択する従業員も少なくありません。
キャリアパスの不透明さ
ホテル・宿泊業界では、キャリアアップの道筋が明確でないケースが多く、将来に不安を感じる従業員が少なくありません。
例えば、一般スタッフから管理職への昇進がどのように決まるのかが不明確だったり、社内研修やスキルアップの機会が不足していたりする場合、長期的なキャリアを築きにくくなります。その結果、「このまま働き続けても成長できるのか?」という疑問を抱え、他業界への転職を考える人が増えます。
人手不足による業務の負担増
ホテル・宿泊業界では慢性的な人手不足が続いており、1人あたりの業務負担が大きくなりがちです。特に繁忙期には、通常よりも多くの業務をこなさなければならず、長時間労働や過重労働が常態化するケースもあります。
人手が足りないことで、スタッフ同士のフォローが難しくなり、結果的に職場の雰囲気が悪化することもあります。このような状況が続くと従業員は疲弊し、離職を選ぶ可能性が高まってしまうでしょう。
ホテル・宿泊業界の離職率を改善する対策
ホテル・宿泊業界の離職率を改善するには、組織が抱える課題に合わせた対策を講じることが重要です。しかし、いざ離職防止に取り組もうと思っても、具体的な施策が思い浮かばないこともあるでしょう。
ホテル・宿泊業界の離職率を改善するための対策例をご紹介しますので、ぜひお役立てください。
- 柔軟なシフト制度の導入
- 給与体系の見直しと公平な評価制度の確立
- 従業員のメンタルヘルス対策の導入
- 研修や教育制度の充実化
- 業務効率化と人材確保による負担軽減
柔軟なシフト制度の導入
ホテル・宿泊業界では、長時間労働や不規則な勤務シフトが離職の大きな原因となっています。そのため、勤務シフトの柔軟性を高めることで、従業員の負担を軽減することが重要です。
例えば、希望シフト制度の導入や短時間勤務、週休3日制の選択肢を増やすことで、ワークライフバランスを改善できます。また、ITシステムを活用してシフト管理を効率化し、公平な勤務割り当てを実現することも有効です。
従業員が無理なく働ける環境を整えることで、定着率の向上につながります。
給与体系の見直しと公平な評価制度の確立
低賃金や昇給の遅さは、従業員のモチベーション低下や離職につながります。これを防ぐためには、給与水準の見直しが不可欠です。
業界水準と比較しながら適正な給与を設定し、業務内容や成果に応じた昇給制度を導入することが重要です。また、評価基準を明確にし、公平な査定を行うことで、従業員の納得感を高められます。
加えて、インセンティブ制度を取り入れることで、モチベーションの向上や長期的な定着を促すことができるでしょう。
従業員のメンタルヘルス対策の導入
接客業であるホテル・宿泊業界では、クレーム対応や業務の多忙さによるストレスが原因で、精神的な負担を感じる従業員が少なくありません。そのため、メンタルヘルス対策を導入し、従業員が安心して働ける環境を整えることが重要です。
具体的には、定期的なカウンセリングの実施や、ストレスチェック制度の導入、ハラスメント防止対策などが挙げられるでしょう。また、管理職へのメンタルヘルス研修を行うことで、職場全体でのサポート体制を強化できます。
研修や教育制度の充実化
キャリアパスの不透明さは、従業員の離職につながる大きな要因の一つです。そのため、研修や教育制度を充実させ、成長の機会を提供することが求められます。
例えば、新入社員向けの基礎研修だけでなく、管理職を目指す社員向けのリーダーシップ研修や、専門スキルを磨くための外部研修制度を整備することが有効です。さらに、資格取得支援制度を導入することで、従業員が自身のキャリア形成に積極的に取り組める環境を作ることができます。
業務効率化と人材確保による負担軽減
慢性的な人手不足を解消するためには、業務の効率化と採用の強化が不可欠です。チェックイン・チェックアウト業務の自動化や、予約管理の簡素化を進めることで、従業員の業務負担を軽減できます。
また、採用活動を強化し、未経験者でも安心して働ける環境を整えることも重要です。外国人労働者の積極採用や、福利厚生の充実による応募者の増加を目指すことで、人材不足の解消と職場環境の改善が期待できます。
ホテル・宿泊業界の離職率改善に成功した事例
離職率改善の施策を講じる際、ホテル・宿泊業界の他社の取り組みを参考にするもの有効です。他社がどのようにして離職率改善に成功したのか、事例を見ていきましょう。
- 株式会社A・I・C広島マネジメント
- 株式会社ジェイアール西日本ホテル開発
- 株式会社ホテル末広
株式会社A・I・C広島マネジメント
株式会社A・I・C広島マネジメントは、シェラトングランドホテル広島を運営する企業です。
離職率が高いホテル・宿泊業界において、同社が抱える従業員の定着率への課題感も例外ではありませんでした。異業種からの転職や新卒の入職者が多いため、せっかく入った人材を失いたくないという想いが強くなっていたそうです。
また、女性管理職の割合30%を目指すものの、23.0%という状態も改善も目指していました。これらの状況を改善するため、以下の取り組みを行いました。
これらの取り組みを継続することで、特に「年間かけて契約社員を正規雇用従業員へと任用替え」の効果で、4年間で退職者数を約52%減と半減することに成功しました。
参考:24時間営業、離職率高いホテル業界の常識を覆す施策を次々に
株式会社ジェイアール西日本ホテル開発
株式会社ジェイアール西日本ホテル開発は、「JR西日本ホテルズ」というホテルグループを展開する企業です。
特にレストランでの早期離職が課題としてあり、フリーターの減少に伴う採用難も加わり人手不足の状況でした。そんな状況を打破するために、以下のような施策を講じています。
これらの取り組みの効果として、アルバイトの離職率を24.3%から13.2%まで改善し、正社員の離職率も近年で最も低い数値を記録することに成功しました。さらに、新人に加えて既存メンバー同士の関心も強くなり、職場の雰囲気が明るくなった意見が増加しました。
株式会社ホテル末広
株式会社ホテル末広は、愛知県で温泉旅館を運営する企業です。
365日体制で営業している宿泊業において「従業員が休めない」「休日が決められない」と悩んでいました。特に若手従業員の定着に課題を感じ、以下の施策を講じました。
これらの取り組みを継続することで、若手従業員の定着率向上に成功。全従業員の約7割が若手という状況に好転しました。
さらに、年間休日150日以上を確保し、地域でも休みの多いホテルとして認知され、採用の応募数も上昇傾向にあります。
AI×従業員のホンネでホテル・宿泊業界の離職率を改善『HR pentest』
HR pentestは、退職者を中心とした従業員の本音から「現場で実際に何が起きているか?」を高い解像度で把握・分析することで、組織課題の解決や離職防止をサポートするツールです。自然言語解析AIに加えて、専任担当者によるサポートも付けることができます。
以下のようなお悩みを抱えている方は、ぜひ一度資料をダウンロードしてみてください。
- 離職要因の分析の仕方がわからない…
- 退職者の本音の聞き出し方がわからない…
- 課題が不明瞭で施策がわからない…
- 給料が原因だと何もできない…

本音を引き出せる | ・イグジットインタビュー研修でスキルUP ・実務を通したトレーニング&フィードバック |
---|---|
解像度の高い面談記録 | ・自動文字起こしでそのまま蓄積 ・AIによる離職要因解析 ・退職者の生の声から課題がわかる |
施策につながる | ・定量×定性で効果的に分析 ・在職者からも退職者からも不満を発見 ・高い解像度で課題把握=施策につながる! |
実際にHR pentestを導入した企業様の事例は、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
本記事では、ホテル・宿泊業界の平均離職率や改善に向けた対策例、高い原因、改善に成功したホテルや旅館の取り組み事例について解説しました。
ホテル・宿泊業界の離職率を改善するためには、労働環境の整備や待遇の向上、キャリア支援の充実が不可欠です。特に、柔軟なシフト制度の導入や給与体系の見直し、メンタルヘルス対策、研修制度の強化、業務の効率化 などを総合的に進めることで、従業員の満足度を高め、定着率の向上が期待できます。
企業が働きやすい環境を整え、従業員の負担を軽減することで、サービスの質向上にもつながります。離職率の低下は企業の成長にも直結するため、継続的な改善に取り組むことが重要です。