2025/05/26
離職対策若手職員はなぜ潰れる?公務員の早期離職の原因と対策について解説

公務員は「安定した職業」のイメージが強いものの、近年では若手職員の早期離職が相次いでいます。特に入職後数年以内に離職を選ぶケースが増えており、離職率の改善に向けて動いている組織は少なくありません。
本記事では、若手公務員の早期離職を防止するための、対策について解説しています。離職率改善の取り組み例をはじめ、早期離職の原因や現状についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
若手公務員の離職の現状
一口に公務員と言っても、国家公務員や地方公務員、教育、消防、警察、税務などその職種は様々です。いずれの職種も平均離職率は10%前後で、民間企業と比較すると離職率は低い傾向にあります。
しかし、公務員の退職者数を年齢別の割合で見てみると、若年層ほど離職率が高い傾向にあることがわかります。総務省の『令和5年 地方公務員の退職状況等調査』によると、地方公共団体を普通退職した人の年齢別割合は以下の通りです。
25歳未満 | 5,846人(8.7%) |
---|---|
25歳〜29歳 | 12,572人(18.8%) |
30歳~34歳 | 9,412人(14.0%) |
35歳~39歳 | 6,900人(10.3%) |
40歳~45歳 | 5,157人(7.7%) |
46歳~49歳 | 2,578人(3.8%) |
50歳~54歳 | 2,614人(3.8%) |
55歳~59歳 | 3,059人(4.5%) |
60歳〜64歳 | 18,666人(27.8%) |
65歳以上 | 242人(0.4%) |
60歳~64歳の高年齢層に次いで、30歳以下の若手の退職者の割合が高くなっており、30歳になるまでに約3割の人が離職していることがわかります。
さらに、近年では若者の公務員離れや労働人口の減少が深刻化しつつあります。そのため、離職防止に向けた対策が急務となっている各自治体や国の機関は少なくありません。
若手公務員はなぜ潰れる?早期離職のよくある原因
若手公務員の離職率を改善するには、なぜ早期退職をしてしまうのかを把握しておくことが重要です。若手公務員が潰れたり、退職を選択してしまうよくある原因について見ていきましょう。
- 理想と現実のギャップ
- 過度な業務負担と人手不足の現場
- 人間関係による心労
- 成長実感が得られない
- 職場環境の変化に適応できない
理想と現実のギャップ
多くの若手公務員は、「安定した職場」や「社会貢献できる仕事」に期待して公務員の道を選びます。しかし、実際に配属されてみると、ルーチン業務の繰り返しやクレーム処理など、想像していた理想像とかけ離れた現実に直面することもあります。
また、行政の仕組みや意思決定のスピードに戸惑い、やりがいや達成感を得られにくいと感じる若手も少なくありません。このようなギャップが、モチベーションの低下や職場への不満につながり、結果として早期離職の要因となっているのです。
過度な業務負担と人手不足の現場
慢性的な人手不足が続く中、若手公務員にも多くの業務が割り振られるケースが増えています。ベテラン職員の退職や異動により、引き継ぎが不十分なまま現場を任され、プレッシャーに押しつぶされそうになることも。
また、繁忙期には長時間残業や休日出勤が常態化しており、「働き方改革」が進んでいるはずの行政機関でも、現場の実態は依然として厳しいままであることも少なくなりません。心身ともに疲弊し、「このまま続けていけるのか」と不安を抱く若手職員が増加しています。
人間関係による心労
公務員の職場では年功序列や縦割り意識が根強く、若手が自由に意見を言いづらい雰囲気があると感じることもあります。上司や先輩とのコミュニケーションに悩む若手職員は多く、特に相談しづらい空気や過度な指導がストレス要因となることがあります。
また、異動が頻繁に行われるため、職場ごとに人間関係を一から築き直さなければならず、それが負担になる場合も。職種によっては、顧客や地域住民への対応が大きなストレスとなっているケースもあるでしょう。
精神的なストレスが蓄積されていくと、離職を選択する原因のひとつとなります。
成長実感が得られない
「自分が成長していると実感できない」と悩む若手公務員は少なくありません。日々の業務が定型的で変化が乏しく、成果が見えにくいことから、達成感や手応えを感じにくいのが現状です。
また、民間企業に比べてキャリアアップのスピードが遅く、評価制度も明確でないため、「このままでいいのか」と不安を感じることもあります。将来のキャリアが描きにくい環境が、若手のやる気を削ぎ、転職を検討する一因となっています。
職場環境の変化に適応できない
公務員の職種によっては数年ごとに異動があり、業務内容や人間関係、勤務地まで大きく変わることがあります。柔軟に対応できる人には刺激となる一方で、変化に弱いタイプの人にとっては強いストレスとなるものです。
特に、ようやく業務に慣れたタイミングで異動が決まり、再びゼロからのスタートになることが、精神的な負担として積み重なります。こうした環境の変化に適応できず、心身のバランスを崩す若手職員も多く、離職につながる要因のひとつです。
離職率計算エクセルテンプレート

従業員人数、離職者数などを入力することで年間の離職率を簡易に計算することができます。
無料ダウンロード若手公務員の早期離職を防止する重要性
若手公務員の早期離職を防止することは、組織に様々なメリットをもたらします。具体的なメリットについて、改めておさらいしておきましょう。
- 優秀な人材の流出防止
- 採用や育成にかかるコストの削減
- 業務の生産性の向上
優秀な人材の流出防止
若手公務員の早期離職を防ぐことは、将来の組織を支える優秀な人材の流出を防ぐことに直結します。
新卒で入庁した職員は、行政の基礎業務や現場の実務を経験する中で、徐々に専門性や判断力を身につけるものです。その途中で離職されてしまうと、将来的に中核を担う存在が育たず、組織の人材バランスが崩れてしまいます。
また、職場に対する不信感が広まれば、採用活動にも悪影響が及びかねません。若手が安心して長く働ける環境づくりは、組織全体の信頼性と将来性を高めるうえでも非常に重要です。
採用や育成にかかるコストの削減
新規採用から実務に戦力化するまでには、多くの時間とコストがかかります。
採用活動や研修、OJT、業務引き継ぎなどを経てようやく自立できるようになった段階で離職してしまえば、それまでの投資が無駄になります。さらに欠員が出れば、再び採用・育成を繰り返さなければならず、現場の負担は増す一方です。
若手職員の定着率を向上させることは、こうした“離職の連鎖”を防ぎ、組織全体の人件費や労力を効率化するうえで欠かせない取り組みです。安定した人員配置は、長期的な視点で見ても大きな経済的メリットをもたらします。
業務の生産性の向上
若手職員が定着することで、業務の引き継ぎがスムーズになり、経験の蓄積によって処理能力や対応力も向上します。結果として、組織全体の業務効率が高まり、サービスの質も向上していくでしょう。
一方で、離職が相次ぐ職場では、常に新人教育に追われ、熟練者の手が取られてしまうため、生産性は低下しがちです。職員が長く働くことで業務が属人化するリスクはあるものの、ナレッジ共有やマニュアル整備を並行して行うことで、組織としての強さが生まれます。
離職防止は、生産性を高めるための土台づくりと言えるでしょう。
若手公務員の早期離職を防止!定着率向上の施策
若手公務員が潰れていく現状を改善するには、その要因に合わせたアプローチを講じることが重要です。具体的にどのような取り組みが有効なのか、施策について見ていきましょう。
- 定期的な面談とフォローアップ
- 研修や資格取得支援の充実化
- 異動・配属の透明性と本人希望の尊重
- メンター制度の強化
- 成果を可視化する表彰制度
定期的な面談とフォローアップ
若手職員の離職率を改善するには、日常業務だけでなく心理的なケアも欠かせません。定期的な面談を実施することで、上司や人事担当が職員一人ひとりの悩みや不安を把握し、早期にフォローできる体制を整えることが重要です。
単なる業務進捗の確認にとどまらず、職場の人間関係やキャリアの悩みなどにも耳を傾けることで、離職リスクの兆候を早期に察知できます。特に1~3年目の若手には、四半期に1回以上の面談を設定するなど、継続的な対話が効果的です。
研修や資格取得支援の充実化
公務員としての専門性やスキルアップを実感できる環境は、職員のモチベーション維持に直結します。基礎的な研修だけでなく、個々の業務内容やキャリアに応じた段階的な研修制度を用意することで、職員が自らの成長を実感できるようになるでしょう。
また、資格取得にかかる費用の補助や、勉強時間の確保に対する柔軟な勤務制度の導入も有効です。自己成長の機会があることで、「この職場で長く働きたい」という意識を育むことができます。
異動・配属の透明性と本人希望の尊重
異動や配属は公務員の職務において避けられないものですが、本人の希望や適性が無視されると不満や不信感を招きやすくなります。異動の目的や理由を丁寧に説明するとともに、事前に本人の希望を聞き取る制度を整えることが大切です。
透明性をもった運用を心がけることで納得感が高まり、配属後のモチベーションや職務適応にも良い影響を与えます。キャリア面談などと連動させれば、中長期的な人材育成にもつながるでしょう。
メンター制度の強化
若手職員が安心して職場に馴染むためには、気軽に相談できる先輩の存在が欠かせません。
メンター制度は、年齢や職層の近い先輩職員をメンターとして配置し、業務の悩みや職場での不安を気軽に相談できる仕組みです。上司とは異なる立場からの助言が得られることで、若手の孤立を防ぎ、心理的安全性の高い職場づくりにもつながります。
定期的なフォローアップやメンター向けの研修を併用することで、制度の形骸化を防ぐことも重要です。
成果を可視化する表彰制度
若手職員の離職理由の一つに、「努力や成果が認められない」という不満があります。日々の業務の中で成果が見えにくい公務の特性を踏まえ、業務改善提案やチーム貢献などを評価・表彰する制度を導入することが効果的です。
小さな取り組みでも適切に評価されることで、「自分の仕事が組織や社会に貢献している」という実感が得られ、モチベーションの維持に繋がります。年1回の表彰式や庁内報での紹介なども、職場の雰囲気向上に寄与します。
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まとめ
本記事では、若手公務員の早期離職を防止するための対策、早期離職の原因や現状について解説しました。
若手公務員の早期離職は、組織にとって大きな損失であるだけでなく、行政サービスの質にも直結する重要な課題です。離職の背景には、働き方や人間関係、キャリアへの不安など、複雑な要因が絡んでいます。
だからこそ、定期的なフォローやキャリア支援、職場環境の整備といった多角的なアプローチが求められます。若手が安心して働き続けられる組織づくりは、将来にわたって安定した行政運営を支える基盤となります。
今後は、現場の声を丁寧に汲み取りながら、実効性のある定着施策を推進していくことが鍵となるでしょう。