2025/04/29
人材育成エンゲージメントスコアを上げるには?平均や算出方法、高い企業の特徴も解説

近年、企業における人材マネジメントの重要指標として『エンゲージメントスコア』が注目されています。エンゲージメントスコアの向上は持続的な組織成長に直結するため、多くの企業が改善に取り組み始めています。
本記事では、エンゲージメントスコアを上げるための施策・取り組みについてまとめました。エンゲージメントスコアの概要や業界別の平均、算出方法、上げるメリット、高い企業の特徴も解説しています。
エンゲージメントスコア改善の施策を講じたい方、平均を知りたかった方もぜひ本記事を役立ててください。
エンゲージメントスコアとは?
まずはエンゲージメントスコアについて、概要や注目される背景、混同されがちな指標の3つに分けておさらいしておきましょう。
- エンゲージメントスコアの概要
- エンゲージメントスコアが注目される背景
- エンゲージメントスコアと従業員満足度の違い
エンゲージメントスコアの概要
エンゲージメントスコアとは、従業員が企業に対してどれだけ高い愛着や貢献意欲を持っているかを数値化した指標です。主にアンケート調査を通じて、職場への満足度やモチベーション、企業理念への共感度などを測定し、その結果を一定の基準に基づいてスコア化します。
エンゲージメントスコアは、単なる愛着度にとどまらず、「自発的な貢献意欲」や「組織への帰属意識」といった内面的な要素を含む点が特徴です。
エンゲージメントスコアが注目される背景
近年、労働人口の減少や働き方改革の推進を背景に、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上が企業経営の重要課題となっています。エンゲージメントスコアは、従業員のモチベーションや離職リスクを把握する有効な指標として注目を集めています。
また、リモートワークの普及により、組織の一体感を数値で可視化する必要性が高まったことも、エンゲージメントスコアが注目される一因です。高いスコアを維持できる企業は、変化の激しい時代でも人材を活かし、競争力を高めることができるとされています。
エンゲージメントスコアと従業員満足度の違い
エンゲージメントスコアと従業員満足度は、似ているようで異なる概念です。
従業員満足度は給与や福利厚生、職場環境などへの満足感を測る指標であり、受け身的な評価にとどまる傾向があります。一方、エンゲージメントスコアは「この会社に貢献したい」という主体的な意欲や、組織へのコミットメントの強さを測る点が特徴です。
満足していてもエンゲージメントが低いケースもあり、企業が持続的成長を目指すためには、単なる満足度向上ではなく、エンゲージメント向上に注力することが不可欠でしょう。
エンゲージメントスコアの平均
自社のエンゲージメントスコアが高いのか低いのかを判断するには、平均値を把握しておくことが重要です。平均値がどのようになっているのか、詳しく見ていきましょう。
業界全体のエンゲージメントスコア平均は70.3点
エンゲージメントスコアの平均は、調査機関や業種によって異なります。
国内データとしては、株式会社アトラエが実施した調査(対象:2,240社以上)によると、業界全体のエンゲージメントスコアの平均は70.3点です。業界別のエンゲージメントスコアの平均は、次の結果が出ています。
業界別のエンゲージメントスコア平均
業界 | エンゲージメントスコアの平均 |
---|---|
教育・学習支援 | 74.74 |
インターネットサービス | 73.53 |
人材関連サービス | 73.34 |
資源・エネルギー | 71.85 |
食料 | 70.86 |
医療・バイオ | 70.22 |
飲食 | 69.64 |
金融 | 69.62 |
レジャー | 69.16 |
システム開発 | 68.99 |
卸業 | 68.83 |
建設・不動産 | 68.66 |
小売 | 68.63 |
機械・電気製品 | 68.15 |
素材・素材加工品 | 67.77 |
エンゲージメントスコアの算出方法
エンゲージメントスコアを計測する方法は様々ですが、一般的にはサーベイを用いて算出します。対象や項目、頻度が異なる3つのサーベイをご紹介しますので、ぜひ自社のエンゲージメントスコアを算出する際の参考にしてください。
- エンゲージメントサーベイ
- センサスサーベイ
- パルスサーベイ
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントスコアを算出する代表的な手法が、エンゲージメントサーベイです。エンゲージメントサーベイは従業員に対して仕事への意欲、上司・同僚との関係性、企業理念への共感度などに関する質問を行い、その回答をもとに数値化する方法です。
設問内容は、業務への誇り・働きがい・自己成長の実感など、従業員の内面的な動機づけに関わるものが中心です。回答はリッカート尺度(5段階・7段階評価)で集計され、平均値を算出してエンゲージメントスコアとします。
調査結果をもとに組織の強み・課題を可視化できるため、多くの企業が定期的に実施しています。
センサスサーベイ
センサスサーベイとは、全従業員を対象に一斉に実施する大規模なエンゲージメント調査を指します。年1回や半期に1回など比較的低頻度で実施され、組織全体のエンゲージメント状況を網羅的に把握することが目的です。
センサスサーベイではエンゲージメントだけでなく、職場環境、マネジメント、キャリア支援など幅広いテーマについて詳細な設問が設けられるケースが一般的です。集計されたデータは部署別・職種別・年代別に分析され、組織全体の課題抽出に役立ちます。
一方で、回答に時間がかかるため、実施後の分析・改善までに一定のリードタイムを要する点には注意が必要です。
パルスサーベイ
パルスサーベイは、短い頻度(週1〜月1回程度)で実施する小規模なエンゲージメント調査です。パルス(脈拍)のように組織の状態をリアルタイムで把握する目的で活用されます。
設問数は少なく、1回あたり3〜5問程度に絞るケースが多いため、従業員の負担が少なく回答率を維持しやすいメリットがあります。パルスサーベイを活用することで、組織の変化や従業員の心理的な兆候を素早く捉え、タイムリーな施策に反映できるのが特徴でしょう。
一方で、短期間のデータだけでは本質的な課題を把握しきれない場合があるため、センサスサーベイと併用する企業も増えています。
エンゲージメントスコアが向上するメリット
エンゲージメントスコアが向上することで、企業は様々なメリットを得ることができます。具体的にどのようなメリットがあるのか、代表的なものについて詳しく見ていきましょう。
- 組織課題の早期発見
- 従業員の離職率低下
- 組織全体の生産性向上
組織課題の早期発見
エンゲージメントスコアが向上する過程では、定期的なサーベイを通じて組織の課題を早期に発見できるメリットがあります。
従業員のモチベーション低下や特定部署におけるマネジメント課題など、表面化しにくい問題も数値データとして可視化できるため、深刻化する前に対応可能です。特にパルスサーベイのように高頻度で実施する調査を活用すれば、組織の変化やストレス兆候をリアルタイムで把握できます。
結果として、人材流出や生産性低下といった大きなダメージを未然に防ぎ、持続的な組織運営につなげることができるでしょう。
従業員の離職率低下
エンゲージメントスコアの向上は、従業員の離職率低下に直結します。
エンゲージメントが高い従業員は、自社への信頼や将来への期待感を持ち、主体的に業務に取り組む傾向があります。そのため、不満やストレスが溜まりにくく、転職や退職を検討するリスクが大きく下がります。
加えて、エンゲージメントスコア向上に取り組む過程で、上司との対話促進やキャリア支援といった施策が進めば、さらに定着率は高まるでしょう。人材流出を防ぐことは、採用コストや教育コストの削減にもつながり、長期的に組織力を強化する重要な要素となります。
組織全体の生産性向上
エンゲージメントスコアが高い組織では、従業員一人ひとりが目的意識を持って業務に取り組み、結果として生産性が向上します。
エンゲージメントの高い従業員は、業務に対して積極的な姿勢を取り、自発的な工夫や改善提案を行うため、チーム全体のパフォーマンスにも好影響を及ぼします。また、良好な組織風土が醸成されることで、部署間の連携が円滑になり、プロジェクトの推進スピードも向上します。
エンゲージメントスコアを高めることは、単なる従業員満足の向上に留まらず、企業の競争力強化にも直結する重要な取り組みといえるでしょう。
エンゲージメントスコアが高い企業の特徴
エンゲージメントスコアが高い企業には、いくつかの共通点があります。特徴を参考に自社の取り組みを検討することもエンゲージメントスコア改善に有効ですので、詳しく解説していきます。
- 明確なビジョンと価値観を共有している
- 双方向のコミュニケーションを重視している
- 従業員の成長支援に積極的に取り組んでいる
明確なビジョンと価値観を共有している
エンゲージメントスコアが高い企業に共通する特徴の一つが、明確なビジョンと価値観を全社的に共有している点です。
企業理念や将来の方向性を具体的に示し、従業員一人ひとりが自らの業務との関連性を理解できる状態を作っています。ビジョンの共有は単なるスローガンの掲示にとどまらず、日々のコミュニケーションや評価制度、キャリア支援にも反映されており、従業員が企業と自分自身の成長を重ね合わせることができるようになっています。
双方向のコミュニケーションを重視している
エンゲージメントスコアが高い企業は、双方向のコミュニケーションを非常に重視しています。
上司からの一方的な指示や評価ではなく、従業員の意見や感情に耳を傾け、対話を通じて信頼関係を築いています。定期的な1on1ミーティングや、意見を自由に表明できる社内アンケート、オープンなフィードバック文化の醸成などが具体例です。
風通しの良い職場環境では、従業員が安心して自己表現できるため、組織への貢献意欲が自然と高まり、エンゲージメント向上につながるでしょう。
従業員の成長支援に積極的に取り組んでいる
従業員の成長を積極的に支援している点も、エンゲージメントスコアが高い企業の大きな特徴です。
スキルアップ研修やキャリア開発プログラムの整備、自己啓発支援制度の導入など、個々の成長意欲に応える環境を整えています。また、単なるスキル習得にとどまらず、本人のキャリアビジョンに寄り添った長期的な支援を行うことで、従業員は自らの可能性を広げる実感を得られるでしょう。
成長実感は仕事へのモチベーションを高め、結果的に組織へのエンゲージメント強化にも直結します。
エンゲージメントスコアを上げるには?向上施策の具体例
「エンゲージメントスコアを上げるために何ができるだろう?」「具体的な取り組みが思い浮かばない」とお困りの方もきっと多いと思います。エンゲージメントスコアの改善を目的とした、代表的な施策をご紹介しますので、ぜひお役立てください。
- 定期的にエンゲージメントスコアを測定・分析する
- 従業員のキャリア支援制度を整備する
- 管理職向けのマネジメント研修を導入する
- 社内コミュニケーションの活性化を図る
定期的にエンゲージメントスコアを測定・分析する
エンゲージメントスコアを向上させるためには、まず定期的な測定と分析が不可欠です。年に1回だけではなく、四半期ごとや月単位でサーベイを実施することで、組織の変化をタイムリーに把握できます。
測定結果は単なる数値として捉えるのではなく、部門別や職位別に分析し、具体的な課題と改善ポイントを明確にすることが重要です。さらに、測定結果を従業員にフィードバックし、改善に向けたアクションプランを共有することで、組織全体でエンゲージメント向上への意識を高めることができます。
従業員のキャリア支援制度を整備する
従業員が将来に希望を持てる環境を整えることは、エンゲージメント向上に直結します。
キャリア支援制度として、社内公募制度、キャリア面談、スキルアップ研修、資格取得支援などを導入する企業が増えています。個々のキャリア目標に沿った成長機会を提供することで、従業員は自らの成長を実感し、企業に対する信頼感も高まるものです。
また、長期的な視点でキャリアパスを設計できるよう支援することは離職防止にもつながり、組織の安定性を高める効果が期待できます。
管理職向けのマネジメント研修を導入する
エンゲージメント向上の鍵を握るのは現場の管理職です。
管理職向けのマネジメント研修を導入することで、部下との適切な関わり方や効果的なフィードバック手法を学び、エンゲージメントを高めるコミュニケーションスキルを習得できます。特に、1on1ミーティングの進め方や、モチベーション管理、部下のキャリア支援に関する実践的な知識を提供する研修が有効です。
マネジメント層の意識とスキルを底上げすることで、組織全体にエンゲージメント向上の好循環が生まれます。
社内コミュニケーションの活性化を図る
社内コミュニケーションの活性化も、エンゲージメント向上に欠かせない施策です。
具体的には、部署間の交流イベントや、フラットな意見交換会、シャッフルランチなど、形式にとらわれないカジュアルな取り組みが効果を発揮します。また、オンライン・オフライン問わず、気軽にコミュニケーションできる仕組みを整備することも欠かせません。
互いの信頼関係を築き、心理的安全性を高めることで、従業員は安心して意見を発信できるようになります。
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まとめ
本記事では、エンゲージメントスコアを上げるための施策・取り組み、業界別の平均、上げるメリット、算出方法、高い企業の特徴について解説しました。
エンゲージメントスコアは、単なる従業員満足度とは異なり、組織への主体的な貢献意欲を可視化する重要な指標です。日本企業では依然としてエンゲージメント率が低い傾向にあるものの、定期的なスコア測定と課題分析、キャリア支援やマネジメント強化、社内コミュニケーションの活性化といった施策を積み重ねることで、着実に向上が可能です。
エンゲージメントを高めることは、離職防止や業績向上にも直結するため、組織の持続的成長を目指すうえで欠かせない取り組みといえるでしょう。まずは現状の把握と小さな改善から始めてみてください。