2024/06/28
離職対策看護師の離職を防止するには?新人の早期退職対策・定着率改善の事例も紹介
看護師の人手不足は医療現場における深刻な課題のひとつです。そのため、看護師の離職防止や新人看護師の早期退職の対策に追われている担当者様もきっと多いと思います。
本記事では、看護師の離職率が上がる原因や離職防止の施策例について解説しています。看護師の平均離職率や離職率が高い病院に共通する特徴、離職防止に成功した病院の事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
看護師の定着率を高め、より良い医療環境を実現するためのヒントを掴みましょう。
看護師の平均離職率
日本看護協会が2024年に発表した「2023年 病院看護実態調査」によると、2022年度の正規雇用看護職員(新卒採用者や既卒採用者を含む)の離職率は11.8%でした。前年度と比較して0.2%上昇しており2020年以降、看護師の離職率は年々上昇しています。
これらの離職率は全国の医療機関を対象とした結果であり、地域によって数値に差があります。正規雇用看護職員の離職率が最も高いのは東京都の15.5%、最も低いのは岩手県の6.5%と大きな開きが見られました。
また、新卒採用者の離職率は10.2%に対して既卒採用者の離職率は16.2%という結果が出ています。そのため、看護学校を卒業して1年以内に辞める新人看護師が、10人に1人はいるということです。
離職率計算エクセルテンプレート
従業員人数、離職者数などを入力することで年間の離職率を簡易に計算することができます。
無料ダウンロード看護師の離職率が高い病院の特徴
看護師の離職率が高い病院には、いくつかの共通点が見受けられます。代表的な特徴として以下の3つが挙げられます。
- 民間運営の病院
- 病床数の少ない病院
- 慢性的な人手不足に陥っている病院
それぞれの離職率が高い病院の特徴について、詳しく見ていきましょう。
民間運営の病院
看護師の離職率が高い病院の特徴に、民間運営の病院であることが挙げられます。
日本看護協会が発表した「設置主体別離職率」によると、最も離職率が高い設置主体は”個人”の17.6%でした。その他の離職率が高い設置主体を見ると、法人病院の離職率が高い傾向にあることから、民間運営の病院は離職率が高いと言えるでしょう。
回答病院数 | 離職率 | |
---|---|---|
計 | 3,639 | 11.8% |
国立 | 178 | 10.6% |
公立 | 582 | 8.8% |
日本赤十字社 | 69 | 9.8% |
済生会 | 65 | 11.9% |
厚生農業協同組合連合会 | 75 | 9.7% |
その他公的医療機関 | 3 | 14.1% |
社会保険関係団体 | 45 | 10.7% |
公益社団法人、公益財団法人 | 135 | 13.1% |
私立学校法人 | 82 | 13.5% |
医療法人 | 2,013 | 14.3% |
社会福祉法人 | 119 | 12.4% |
医療生協 | 52 | 11.2% |
会社 | 17 | 10.2% |
その他の法人 | 144 | 12.8% |
個人 | 20 | 17.6% |
個人無回答・不明 | 40 | 15.0% |
病床数の少ない病院
病床数の少ない医療機関も、離職率が高い病院の特徴として挙げられます。
日本看護協会が発表した「病床規模別離職率」では、最も離職率が高いのは病床数”100~199床”の医療機関でした。概ね病床数が少なく、規模の小さい病院は離職率が高い傾向があると言えるでしょう。
回答病院数 | 離職率 | |
---|---|---|
計 | 3,639 | 11.8% |
99床以下 | 975 | 12.7% |
100~199床 | 1,301 | 12.8% |
200~299床 | 490 | 11.8% |
300~399床 | 366 | 11.3% |
400~499床 | 222 | 11.1% |
500床以上 | 284 | 11.5% |
無回答・不明 | 1 | 8.5% |
慢性的な人手不足に陥っている病院
慢性的な人手不足に陥っていることも、看護師の離職率が高い病院も特徴として見受けられます。特に近年では少子高齢化や看護師市場の需要過多により、慢性的な人手不足に悩む病院は増加傾向にあります。
人手不足は看護師一人ひとりの業務負担が増え、長時間労働や休日出勤の元なるだけでなく、医療事故や人的ミスを誘発する原因となるため注意が必要です。
看護師の離職率が上がってしまう原因
看護師が離職してしまう理由は人によって様々です。しかし、次のような原因がある場合は看護師の離職率は高くなってしまうため注意が必要です。
- 職場内や患者との人間関係
- ワークライフバランスが保てない
- ライフステージの変化に対応できない
- キャリアアップを望めない
上記の原因についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
職場内や患者との人間関係
看護師の離職率が上がる主な原因のひとつに、職場内や患者との人間関係があります。看護師は医師や他の看護師、事務スタッフと協力しながら業務を遂行しますが、この中でのコミュニケーションが円滑でない場合はストレスが増大するものです。
特に上司や同僚との間に摩擦が生じると職場環境が悪化し、離職の意向が強まります。もしも職場内でハラスメントやイジメが横行してしまっている場合は、早急な対策が求められるでしょう。
また、患者やその家族との対応においても、クレームや感情的な対立が頻発すると、精神的な負担が大きくなります。このような人間関係のトラブルが続くと、看護師のモチベーションが低下し、結果的に離職に繋がります。
ワークライフバランスが保てない
看護師がワークライフバランスを保てないことも、離職率が上がる原因のひとつです。看護師は24時間体制での業務を求められるなど、過酷な勤務体系の職種です。
その中で長時間労働や休日出勤など、過度な業務負担がかかってしまうとワークライフバランスを保てなくなります。プライベートの時間を十分に確保できないと、身体面・精神面に不調をきたし、離職や早期退職を促進する要因となるのです。
ライフステージの変化に対応できない
看護師のライフステージの変化に病院側が対応できていないことも、離職率が上がってしまう原因となり得ます。
結婚や妊娠、育児、介護などのライフイベントは、仕事と生活の両立を困難にするものです。特に育児休暇や介護休暇の取得が難しい職場環境では、看護師は家庭と職場の両方でストレスを感じることが多く、結果として離職を選択するケースが増えます。
ライフステージの変化に応じた柔軟な働き方が提供されない場合、看護師は自分のキャリアを継続することが難しいと感じることが多いため、体制の整備が求められます。
キャリアアップを望めない
キャリアアップの機会が限られていることも、看護師の離職率が上がってしまう原因のひとつです。
看護師としての専門性を高めたり、管理職への昇進を目指したりする意欲があっても、その機会が少ない職場ではモチベーションが低下します。特に長年勤めても役職が上がらない、または研修や教育の機会が提供されない場合、看護師は自分の成長を感じられず、他の職場への転職を考えることになります。
キャリアパスが明確であり、積極的に支援される環境が整っていることが、看護師の離職防止には重要です。
看護師の離職防止/早期退職対策に向けた施策例
看護師の離職防止・新人看護師の早期退職を対策するには、原因に合わせた適切なアプローチが求められます。ここでは代表的な施策例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 看護師のメンタルケアサポート
- 福利厚生の充実化
- 労働環境の整備
- コミュニケーションの促進
看護師のメンタルケアサポート
看護師の離職を防止するには、メンタルケアをサポートすることが重要です。メンタルケアの充実は看護師が安心して働ける職場環境を作り出し、離職防止に直結します。
看護師の職務は業務責任が重く、精神的な負担を強く感じやすい傾向にあります。そのため、過度なストレスや精神的不調を避けるための支援が必要です。
福利厚生の充実化
福利厚生の充実化は、看護師の離職防止において大きな役割を果たします。福利厚生が充実していることで看護師は自分が大切にされていると感じ、長期的に働き続けたいという意欲が高まります。
特に育児や介護の支援といったライフステージの変化に対応できるもの、休暇やリラクゼーション施設の利用といったものなど、看護師が仕事とプライベートを切り替えて安心して働ける福利厚生は有効だと考えられるでしょう。
労働環境の整備
激務と言われる看護師の職務において、労働環境の整備は離職防止に直結する重要な施策です。院内で過重労働が常態化している、ハラスメントが横行している、設備に不備がある場合などは、労働環境を整備する必要があるでしょう。
定期的な職場環境の見直しを行い、問題点を迅速に改善する仕組みを導入することも重要です。
コミュニケーションの促進
コミュニケーションの促進は職場の人間関係を良好に保ち、看護師の離職を防止するための重要な施策です。コミュニケーションの活性化は離職防止だけでなく、看護師同士の信頼関係を深め、チームワークの強化にも働きかけます。
上司や同僚とのオープンな対話の機会を設けるほか、レクリエーションや季節イベントといった職場外での交流の機会を設けるのも有効でしょう。
看護師の離職防止成功事例
看護師の離職防止に成功した病院の事例をご紹介します。離職防止の基本的な取り組みで効果を得られたケース、ユニークな取り組みを行ったケースもありますので、ぜひ参考にしてください。
大阪大学医学部附属病院
2014年度に看護部の離職率が13.1%だった大阪大学医学部附属病院では、離職者の約40%が経験5年未満の看護師でした。経験5年以上の中堅看護師にかかる教育や様々な役割を含む業務的負担が非常に大きく、心身共に疲弊感を高めていることが大きな課題となっていたようです。
そこで、看護体制の変更による時間外労働の時間短縮、新卒者や中途採用者が気軽に上司へ相談できる体制を構築するなどの取り組みで、離職率は7.9%まで改善されました。
五稜会病院
看護職員の離職離職率が14.1%だった五稜会病院では、慢性的な人手不足による業務負担やライフイベントに伴う離職が主な課題でした。
そこで、結婚や出産といったライフイベントに対応した働き方ができる体制作り、医療現場特有のストレスのケアを中心とした次のような取り組みを行いました。その結果、2021年の看護職員の離職率は7.22%まで改善されました。
長崎労災病院
長崎労災病院では、2016年に平均在院日数が短縮して医療密度が上がり、環境に馴染めない職員の離職や予定退職者が重なり離職率は11%まで上昇。さらに、業務負担の大きさから短時間勤務制度の取得率が低い病棟もあったことが課題でした。
そこで、働き方や休み方の改善に関する離職防止の取り組みを行うことで、2017年の離職率は7.8%まで改善することに成功しました。
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まとめ
本記事では、看護師の離職率が上がる原因や離職率が高い病院の特徴、離職防止の施策例についてご紹介しました。
看護師市場の需要が年々高くなる昨今において、看護師の離職や新人看護師の早期退職を防止は重要な課題です。人間関係や業務負担の過多、ライフステージの変化など離職理由は十人十色であるため、離職率を改善するにはそれぞれに合わせた適切なアプローチが求められます。
そのためには、まず組織課題を分析し、離職要因を一つひとつ解決していくことが重要です。離職防止の取り組みを行う人的リソースの余裕がない、分析の仕方がわからないという場合は、AIによる離職防止ツールを導入するのもう有効でしょう。
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