2025/10/03
離職対策エルダー制度導入マニュアル|メリット・デメリットや導入のポイントも解説

新入社員の早期定着が大きな課題となっている企業は少なくありません。そこで近年注目を集めているのが、エルダー制度という取り組みです。
本記事では、エルダー制度の仕組みやメリット・デメリット、導入マニュアル、企業事例までを幅広く解説しています。エルダー制度を効果的に運用するためのポイントをしっかり抑えて、新入社員の早期定着と成長を促しましょう。
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エルダー制度とは?
新入社員が職場にスムーズに馴染み、安心して成長できる環境を整えるエルダー制度。まずはその全体像を、以下の3点から詳しく見ていきましょう。
- エルダー制度の意味・目的
- エルダー制度とメンター制度の違い
- エルダー制度とOJTの違い
エルダー制度の意味・目的
エルダー制度とは、新入社員や若手社員に対して、年齢や経験の近い先輩社員が日常的な業務や職場生活をサポートする制度です。
エルダー制度の目的は、配属後の不安を軽減し、スムーズな職場定着を促すことにあります。人事担当者や上司だけでは把握しきれない細かな悩みを、身近な先輩が相談相手となることで解決しやすくなる効果が期待できます。
エルダー制度とメンター制度の違い
エルダー制度と混同されやすい取り組みとして、メンター制度があります。メンター制度は、キャリア形成や中長期的な成長を目的に、直属の上司以外の先輩社員が相談役となる仕組みです。
一方でエルダー制度は、より実務に近い形で日常業務や職場環境への適応を支援する点が特徴です。つまり、メンター制度が「キャリア相談」に重きを置くのに対し、エルダー制度は「日常的な実務支援」と「職場定着」に重点を置いています。
エルダー制度とOJTの違い
OJT(On the Job Training)は、上司や先輩社員が仕事を通じて知識やスキルを教える教育手法です。業務の遂行に必要な技術習得が主な目的であり、評価や指導の要素が強いのが特徴となります。
一方、エルダー制度は教育というよりも「伴走支援」に近く、仕事の教え方そのものよりも精神的サポートや職場適応を重視します。OJTが「スキル育成」に焦点を当てるのに対し、エルダー制度は「安心して働ける環境づくり」に寄与する仕組みと言えるでしょう。
エルダー制度のメリット
エルダー制度は新入社員だけでなく、組織全体にさまざまな恩恵をもたらします。双方にメリットがある仕組みの魅力を紹介しますので、参考にしてください。
- 早期離職の防止
- 新入社員の成長スピードの向上
- エルダーのマネジメント力向上
早期離職の防止
エルダー制度を導入することで、新入社員は身近に相談できる先輩を持ち、不安や悩みを抱え込まずにすみます。仕事の進め方だけでなく、職場での人間関係やルールなども丁寧にフォローしてもらえるため、孤立感を軽減し、早期離職のリスクを下げる効果が期待できるでしょう。
特に入社直後の3か月から半年は離職が起こりやすい時期ですが、エルダーが伴走することで安心感が生まれ、定着率向上につながります。
新入社員の成長スピードの向上
エルダー制度では、近い立場にいる先輩が日常的にサポートするため、新入社員は実務を学びやすくなるものです。上司に聞きにくい細かな質問も気軽に相談できるため、業務習得のスピードが加速します。
また、エルダーが自らの経験を踏まえた具体的なアドバイスをすることで、新入社員は効率的にスキルを身につけられます。結果として、短期間で即戦力化を図れる点が企業にとっても大きなメリットとなるでしょう。
エルダーのマネジメント力向上
エルダー制度は新入社員だけでなく、エルダー(指導役となる先輩社員)本人にとっても成長の機会です。後輩を指導・支援する役割を担うことで、コミュニケーション力や課題解決力、さらにはリーダーシップが自然と磨かれていきます。
将来的に管理職候補となる社員にとっては、マネジメントの実践経験を積む場となり、キャリア形成にもプラスです。エルダー制度は双方に利益をもたらし、組織全体の人材育成力を底上げします。
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無料ダウンロードエルダー制度のデメリット
エルダー制度の導入には多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。上手く運用しないと逆効果になるリスクもありますので、実際に起こりうるデメリットとその対策を整理しておきましょう。
- エルダーの負担が増加する
- マネジメント能力で効果に差が出る
- 新入社員とエルダーの相性問題
エルダーの負担が増加する
エルダー制度では、新入社員のサポートに時間や労力を割く必要があります。そのため、自身の業務量が増加し、負担を感じるケースも少なくありません。
特に繁忙期には、指導と本来の業務の両立が難しくなり、エルダーのストレスやモチベーション低下につながる恐れがあります。制度を形骸化させないためには、エルダーに対して業務調整や支援体制を整えることが不可欠です。
マネジメント能力で効果に差が出る
エルダーの指導力やマネジメント力は個人差が大きく、制度の成果に影響します。経験やスキルが十分でないエルダーが担当すると、新入社員への支援が不十分となり、成長や定着に結びつかないことがあります。
また、逆に優秀なエルダーに偏ってしまうと負担が集中しがちです。企業としては、エルダー向けの研修や評価制度を整備し、支援スキルを均質化する取り組みが必要です。
新入社員とエルダーの相性問題
エルダー制度は人間関係に基づく仕組みであるため、担当者と新入社員の相性が合わない場合、逆効果となるリスクがあります。性格や価値観の違いから相談しにくい雰囲気が生まれると、かえって孤立感を強めてしまう恐れがあります。
相性問題を避けるには、複数の相談先を設けたり、人事が定期的にフォローアップしたりする仕組みを整えることが重要です。
エルダー制度の導入マニュアル
エルダー制度を形だけで終わらせず、効果的に運用するには明確な手順が必要です。選任基準や研修、マッチングの方法、フォローアップまで、エルダー制度を確実に根付かせるステップをわかりやすく解説します。
- 制度導入の目的を明確にする
- エルダーを選定するための基準を設定する
- エルダーのサポート体制を整備する
- 新入社員とのマッチングと運用を開始する
- 定期的なフォローアップと効果検証を行う
1.制度導入の目的を明確にする
エルダー制度を効果的に導入するためには、まず制度の目的を明確にすることが重要です。
新入社員の早期定着を目指すのか、業務習得のスピードを高めたいのか、あるいはエルダーの育成を目的とするのかによって、制度設計の方向性は変わります。目的を社内で共有することで、関係者が共通認識を持ち、運用に一貫性を持たせられます。
2.エルダーを選定するための基準を設定する
次に必要なのが、エルダーとなる人材を選定する基準を明確にすることです。単に経験年数が長い社員ではなく、新入社員が相談しやすい性格や、指導力・コミュニケーション力を持つ人材が適任でしょう。
また、エルダーに偏りが出ないよう、部門や業務内容とのバランスも考慮することが求められます。
3.エルダーのサポート体制を整備する
エルダーに過度な負担をかけないためには、会社として支援体制を整えることが不可欠です。具体的には、以下のようなサポート体制が求められます。
エルダー制度の定着には、エルダー自身への支援が欠かせません。
4.新入社員とのマッチングと運用を開始する
準備が整ったら、新入社員とエルダーをマッチングし、運用をスタートします。マッチングの際には、性格や働き方の相性を考慮することが効果を高めるポイントです。
運用開始後は定期的な面談や相談機会を設け、新入社員が安心してエルダーに頼れる関係性を築くことが大切です。円滑な関係性が構築できれば、定着率や成長スピードの向上につながります。
5.定期的なフォローアップと効果検証を行う
エルダー制度は導入して終わりではなく、定期的にフォローアップし、効果を検証することが重要です。
新入社員やエルダー双方からのフィードバックを収集し、課題や改善点を明確にします。例えば「相談しやすさ」「業務習得度」「離職率」などを指標に設定すると、制度の成果を可視化することが可能です。
改善を繰り返すことで、エルダー制度の実効性を高め、組織全体の人材育成に貢献します。
エルダー制度を導入する際の注意点
エルダー制度は新入社員の定着や成長に有効ですが、運用方法を誤ると期待していた効果が得られない場合もあります。どのような点に注意して運用すべきか、ポイントをしっかり抑えておきましょう。
- エルダーへの負担を軽減する仕組みを整える
- 新入社員とのマッチングを慎重に行う
- 定期的な評価と改善を実施する
エルダーへの負担を軽減する仕組みを整える
エルダーは自身の業務を抱えながら新入社員の支援を行うため、負担が過剰になると制度が逆効果になりかねません。そのため、業務量の調整や支援ツールの導入、相談窓口の設置など、エルダーを支える仕組みを整えることが大切です。
また、エルダー役をローテーション制にするなど、偏りをなくす工夫も有効です。エルダー自身が安心して役割を担える環境づくりが、制度定着の前提条件となります。
新入社員とのマッチングを慎重に行う
エルダー制度の成果は、新入社員とエルダーの相性に大きく左右されます。性格や価値観が合わないと、相談しにくい関係性となり、かえって新入社員の孤立を招く恐れがあります。
そのため、単に部門や業務内容で割り当てるのではなく、コミュニケーションスタイルや働き方を考慮したマッチングが重要です。必要に応じて担当を変更できる柔軟な仕組みも、制度運用を安定させるポイントになります。
定期的な評価と改善を実施する
エルダー制度は導入して終わりではなく、継続的な評価と改善が不可欠です。新入社員やエルダーからのフィードバックを定期的に収集し、課題を洗い出すことで制度の質を高められます。
例えば、離職率や業務習得度、相談回数などを指標に設定すれば、効果を客観的に測定できます。改善を繰り返すことで制度が形骸化せず、常に現場に合った形で機能し続けることが可能になるのです。
エルダー制度を導入した企業の事例
実際にエルダー制度を導入した企業の成功事例を見ると、制度の効果や運用のポイントが具体的にイメージできます。さまざまな業界での取り組みを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 事例1:ソフトバンク株式会社
- 事例2:大和ハウス工業株式会社
- 事例3:社会福祉法人園盛会
事例1:ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社では、経験豊富な先輩社員が新入社員の教育やサポートを行うエルダー制度を運用。新入社員は業務や職場環境への適応をスムーズに進められ、安心して成長できる環境が整っています。
その結果、職場定着率の向上や社員全体のモチベーションアップにつながっており、エルダー制度の適切な運用が企業全体の成長に寄与する好例です。
事例2:大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社では、新入社員の育成を支援する「OJTエルダー制度」を導入しました。中堅社員がエルダーとして新入社員を指導し、部門内外の関係者と連携しながら成長を促進します。
エルダーには指導方法の研修も行い、OJTとOFF-JTを組み合わせた体系的な教育制度を整備。これにより新入社員は職場への適応がスムーズになり、安心してスキルや知識を身につけられる環境が提供されています。
事例3:社会福祉法人園盛会
社会福祉法人園盛会では、「互いに尊敬し教え合う文化」を重視し、特別養護老人ホーム多摩の里けやき園でエルダー制度を導入しました。新入職員は資格取得支援制度も活用でき、福祉知識がない状態でも安心して学べます。
エルダーによる丁寧な指導で対話の質が向上し、新入職員からも高評価を獲得。職員全体で技術向上を目指す取り組みの一環として効果を上げています。
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まとめ
本記事では、エルダー制度の仕組みやメリット・デメリット、導入マニュアル、企業事例についてまとめました。
エルダー制度は、新入社員の定着や成長を促進し、組織全体の活性化にもつながる制度です。しかし、エルダーの負担や相性問題など、導入にあたっては注意が必要です。
本記事で紹介したメリットやデメリット、導入マニュアル、企業事例を参考に、自社の状況に合った運用方法を検討することで、制度の効果を最大化し、持続的な人材育成につなげることができるでしょう。