2024/10/29
離職対策人手不足を解消したい！5つの対策と原因、解決した企業の事例も解説
近年、多くの企業が慢性的な人手不足に悩まされており、深刻な社会問題となりつつあります。人手不足は経営に直結する重要な課題であるため、人材確保や離職率の改善が急務となっている方も多いでしょう。
本記事では、企業が人手不足を解消するための対策について解説しています。企業が人手不足に陥る原因、解決に成功した企業の取り組み事例、特に深刻な業界についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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日本における人手不足の現状
現在、日本では深刻な人手不足が続いています。特に、少子高齢化の影響で労働人口が減少しており、多くの業界が人材確保に苦しんでいます。
東京商工リサーチが2024年に実施したアンケート調査（有効回答4,619社）によると、「正社員不足」の企業は69.3％に達し、前年の66.5％よりさらに悪化しています。企業規模別に見ると、「正社員不足」と回答した大企業が77.6%に対し中小企業は68.4%という結果になっており、大企業ほど人手不足が切迫しているのが現状です。
また、帝国データバンクが発表した『人手不足倒産の動向調査（2024年度上半期）』によると、人手不足倒産の件数は2024年度上半期（4〜9月）で163件に達していました。この数字は過去最多を大幅に更新した2023年度をさらに上回る、記録的なペースで急増しているのです。
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無料ダウンロード人手不足が著しい業界について
人手不足は企業の共通課題であるものの、その深刻さは業界によって異なります。
厚生労働省では、人手不足の度合いを示す指標として『労働者過不足判断D.I.』という値を用いています。厚生労働省が発表した業界（産業）別の人手不足の度合いは以下の通りです。
| 産業 | 不足 | 過剰 | D.I. |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 59 | 2 | 57 |
| 製造業 | 46 | 5 | 41 |
| 情報通信業 | 56 | 2 | 54 |
| 運輸業、郵便業 | 58 | 2 | 56 |
| 卸売業、小売業 | 31 | 3 | 28 |
| 金融業、保険業 | 36 | – | 36 |
| 不動産業、物品賃貸業 | 43 | 1 | 42 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 61 | 1 | 60 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 48 | 2 | 46 |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 40 | 2 | 38 |
| 医療、福祉 | 61 | 3 | 58 |
| サービス業（他に分類されないもの） | 49 | 2 | 47 |
人手不足が招く企業への悪影響
当然ですが、人手不足は企業にとってのビジネスリスクはもちろん、従業員や顧客にまで様々な悪影響をもたらします。具体的にどのような悪影響を及ぼすのか、詳しく見ていきましょう。
- 業績悪化と競争力の低下
- 従業員の負担増加と離職率の上昇
- サービス品質と顧客満足度の低下
業績悪化と競争力の低下
人手不足は企業の業績に直接的な悪影響を及ぼすものです。
まず、必要な労働力を確保できないことで、生産性が低下し、納期遅延や製品の質の低下につながります。対応可能な仕事量が限られるため、新規事業や拡大戦略に乗り出すことも難しくなるでしょう。
さらに、競争が激しい市場においては、他社が新しい技術やサービスを導入する中で、自社が対応できずに遅れをとるリスクもあります。結果的に企業の競争力が失われ、業績悪化や市場シェアの縮小につながる可能性が高まります。
従業員の負担増加と離職率の上昇
人手不足が続くと、現場の従業員に対する負担が大きくなります。
少ない人数で多くの仕事をこなさなければならないため、残業が増えたり、長時間労働が常態化する可能性が上がります。次第に従業員のストレスが蓄積し、心身の健康を害するリスクが高まってしまうでしょう。
その結果、職場に対する不満が増え、離職率が上昇する可能性があります。特に優秀な人材が辞めてしまうと、さらなる人手不足に陥り、悪循環が生じることとなるのです。
サービス品質と顧客満足度の低下
人手不足はサービスの質にも影響を及ぼします。
例えば、対応が遅れたり細かな配慮が行き届かなくなることで、顧客満足度が低下します。特に顧客対応が重要な業種では、クレームや不満が増加し企業の評判にも悪影響を与えることが考えられるでしょう。
また、品質の低下はリピーターの減少や新規顧客の獲得困難を招き、売上にも直結します。
なぜ起こる？企業が人手不足に陥る原因
日本では少子高齢化による労働人口の減少が深刻化しており、人手不足を根本的に解消することは容易ではありません。しかし、企業における人手不足の原因を特定できれば、解決に向けた対策を講じることが可能になります。
企業が人手不足に陥る代表的な原因について、詳しく見ていきましょう。
- 厳しい労働環境と賃金の低さ
- 職場内の人間関係が良くない
- 人材育成や採用戦略の遅れ
- 若手社員が定着しない
厳しい労働環境と賃金の低さ
特に労働時間が長く、肉体的・精神的に負担の大きい企業では、人手不足が深刻です。
例えば、建設業や飲食業、介護業界等は労働環境が厳しい一方で賃金が低いため、求職者にとって魅力的な職場とは言えず、採用が難航することが多いです。こうした業界では、人手不足がさらに業務の負担を増大させ、現場の従業員が長時間労働を余儀なくされる悪循環に陥るケースが増加します。
職場内の人間関係が良くない
職場内の人間関係が悪いことも、企業が人手不足に陥る原因のひとつです。上司や同僚とのコミュニケーションが円滑でない場合、従業員は職場に対してストレスを感じ、働きづらさを抱えることが多くなります。
特に、ハラスメントが横行している環境では、離職率が高まる傾向にあります。また、新しく入社した社員が職場に溶け込みにくい場合、早期に辞めてしまうことも少なくありません。
職場の人間関係が原因で退職者が増えると、企業は新たな人材を確保することが難しくなり、人手不足がさらに深刻化するという悪循環に陥ります。
人材育成や採用戦略の遅れ
企業が人手不足に陥る理由のひとつとして、人材育成や採用戦略の遅れが挙げられるでしょう。特に、急速に変化するビジネス環境に対応できず、適切なスキルを持った人材を育てることができない企業は人手不足に悩まされる傾向があります。
また、採用活動が十分に行われておらず、求職者に対して企業の魅力を伝えきれていない場合もあるのです。さらに、デジタル技術を活用したリモートワークや副業といった新しい働き方に対応できない企業は、他の競合企業に優秀な人材を奪われるケースが増えています。
若手社員が定着しない
多くの企業で、若手社員の離職率が高いことも人手不足の原因です。特に入社後数年以内に辞めるケースが多く、これは職場環境や仕事内容が期待に合わなかったり、キャリア成長の機会が限られていたりすることが主な理由として挙げられます。
また、コミュニケーション不足や教育体制の不備も、若手社員が早期に辞める要因となっています。若手が定着しないと次世代を担う人材が育たないため、企業全体の成長にも悪影響を与えることになるのです。
人手不足解消に向けて企業が取り組むべき6つの対策
企業が人手不足を解消するには、原因に合わせたアプローチが求められます。しかし、いざ解決に向けた施策を講じようとしても、具体的なアクションプランが思い浮かばないこともあるでしょう。
人手不足解消に向けた対策の取り組み例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 給与や福利厚生の見直し
- 柔軟な働き方の導入
- システムやツールを導入して業務を効率化
- 社内コミュニケーションの促進とチームワークの向上
- 女性やシニア層の活躍を推進
- 若手社員の離職を防止
1.給与や福利厚生の見直し
人手不足解消には、給与や福利厚生の見直しが重要です。競争力のある給与を提供することで、優秀な人材を引き付け、既存の従業員のモチベーション向上にもつながります。
加えて、通勤手当や住宅手当、育児支援などの福利厚生を充実させることで、従業員が安心して働ける環境を整えることも有効だと考えられます。
2.柔軟な働き方の導入
柔軟な働き方の導入は、幅広い層の人材を確保するための効果的な対策です。例えば、テレワークやフレックスタイム制を導入することで働き方の選択肢を増やし、育児や介護をしながら働きたい従業員にも対応できるようにするのが有効でしょう。
個人のライフスタイルに合わせた働き方を提供し、従業員のワークライフバランスを向上させることが、人手不足の解消や離職率の低下にもつながります。
3.システムやツールを導入して業務を効率化
人手不足を解消するためには業務の効率化も欠かせません。最新のシステムやツールを導入することで、従業員一人ひとりの作業負担を軽減し、短時間での業務遂行が可能になるでしょう。
例えば、タスク管理ツールやコミュニケーションプラットフォームを活用すれば、チーム内での情報共有がスムーズになり、無駄な作業を省くことが可能です。また、AIや自動化技術を導入することでルーチンワークを効率化し、従業員がより付加価値の高い仕事に集中できる環境を整えることができます。
4.社内コミュニケーションの促進とチームワークの向上
人手不足の解消には、社内コミュニケーションの強化とチームワークの向上も重要です。職場内での円滑なコミュニケーションが図られることで、従業員のモチベーションが高まり、協力して効率良く業務を遂行することができます。
定期的なミーティングやフィードバックの機会を設けることで、社員同士の意見交換が活発になり、信頼関係も深まります。さらに、チームで問題を解決する文化が育てば、組織全体の生産性が向上し、人手不足に伴う負担の軽減につながるでしょう。
5.女性やシニア層の活躍を推進
人手不足を解消するためには、女性やシニア層の活躍推進が大切です。育児や介護と両立しながら働く女性に対して柔軟な勤務時間を提供したり、シニア層に対しては経験や知識を活かせる役割を与えることで、多様な働き手を確保することができます。
また、女性やシニア層が働きやすい環境を整えることで、これまで労働市場に参加していなかった人材の活用が進み、人手不足の解消に貢献します。
6.若手社員の離職を防止
若手社員の離職を防ぐことも、人手不足解消の重要な対策です。入社初期の段階でしっかりとした研修やメンター制度を導入し、成長機会を提供することが求められます。
また、キャリアパスの明確化や将来のビジョンを共有することで、若手社員が将来に対して安心感を持ち、長く働き続けたいと感じるようになります。職場内でのサポート体制を強化することで離職を防ぎ、次世代の人材を確保することが大切です。
人手不足の解決に成功した企業の取組事例
実際に人手不足の解消に向けて取り組んでいる企業は、どのような対策を講じているのでしょうか？具体的な企業の事例をご紹介しますので、是非参考にしてください。
- 有限会社スタプランニング
- 船橋株式会社
- 株式会社いせん
有限会社スタプランニング
不動産業を営む『有限会社スタプランニング』は、従業員一人ひとりに対する業務負担が大きく、ピーク時は社員数30名に対して1年で約10名が退職する高い離職率を課題として抱えていました。そして、2012年に中核社員の相次ぐ離職と女性管理職の妊娠が重なり、人手不足対策に乗り出すことにしました。
業務の効率化や働きやすい職場環境の構築に務めることで、もともと180時間ほどあった月間の残業時間を4時間程度までに短縮。対策前より少ない社員数と少ない残業時間で、対策前と同程度の利益を維持することに成功しています。
さらに、出産や育児を理由とする退職がなくなり、女性社員の定着率改善にも成功しました。
参考：厚生労働省「中小企業・小規模事業者の人手不足への対応事例」
船橋株式会社
製造業を営む『船橋株式会社』では、合羽やエプロンの製造販売といったニッチな業界のため認知度が低く、採用応募数に大きな課題を感じていました。特に大卒の新卒採用に苦戦していたほか、ライフステージの変化に伴う女性社員の離職が大きなきっかけとなり、人手不足解決に向けた対策に乗り出しました。
根気強く取り組んだ結果、女性目線で働きやすい職場であることのアピールに成功。課題であった大卒の新卒採用に成功したほか、5年間で高校生4名と大学生13名のインターン生を受け入れ、未来の採用応募者のアピールにも繋げています。
参考：ミラサポ「ホームページのリニューアルで、「女性目線で働きやすい職場」のアピールに成功」
株式会社いせん
旅館業を営む『株式会社いせん』は、慢性的な人手不足に悩まされていました。その中でも「従業員が無理なく働ける仕組みを作りたい」と考え、顧客・従業員・地域の三方の満足を軸として様々な対策を講じました。
その結果、人手不足解消の取り組みを始めてから約10年後に売上・従業員数は3倍に成長し、従業員の働き方や勤務体系を考える幅も広げることに成功。人手不足解消とともに、事業成長も実現した事例です。
参考：中小企業庁「中小企業・小規模事業者の 人手不足対応事例集」
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まとめ
本記事では、企業が人手不足を解消するための対策や陥る原因、解決に成功した企業の取り組み事例、特に深刻な業界について解説しました。
人手不足は企業の業績や従業員の離職率、顧客満足度にも直接的な影響を与える深刻な問題です。特に近年では人手不足倒産の件数が年々上昇しているため、早急な対策が求められます。
人手不足を解消するには、労働条件の見直しやテレワーク等の柔軟な働き方の導入、女性やシニア層の活躍推進、システムやツールの導入による業務効率化などの対策で、まず既存の従業員の定着化を図ることが重要です。自社の離職要因に合わせたアプローチを行って、状況の改善を図りましょう。
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